その男の居場所についた時には、すでに夜。
それも11時も終わろうとしている時であった。
「着いたぞ。……大丈夫か、お前」
この場所は、ジュンが轢かれた場所からそう遠くない位置。
車から降りて、プロシュートが助手席のドアを開けると、轢かれた場所に近ければ、轢いた相手に近いためかジュンの顔色は相当青ざめている。
幽霊に青ざめているなんておかしい表現かもしれないが、とにかく尋常じゃあないくらいにジュンは落ち着きが無く、気分が悪そうだった。
「俺一人で蹴りを付けに行く……っつーわけにもいかねェよな」
「私も、行く。行くにきまってる。全部、全部プロシュート一人に頼んじゃいけないの位わかってる。でも……」
そう言って、車から降りジュンはプロシュートの手を握る。
手に伝わる、ひんやりとした感触。
相変わらず温度が上がることが無ければ、温度が下がることもない。
「触れていて、いい、ですか?」
「良いに決まってンだろ。……さっさと蹴りつけに行くぞ」
伝わる熱が、心地よく
触れているうちに、体に嫌なくらい走る悪寒がだんだんと無くなっていく気がした。
ただ、こうやって触れていられるのも最後かもしれないと思うと、なぜかジュンはどうしようもなくつらくなった。
それがなぜなのかは、本当にいまいちよくわからなかった。
これで、自分の望みはすべて達成されて、全部終わるというのに。
マンションの一部屋のドアに手をかける。
もちろんの事鍵はかかっている。
「鍵は、これか」
「いつの間に?」
「うちの組織舐めんなよ?これくらいすぐに調達できる」
プロシュートが鍵を取り出せば、ドアはいとも簡単に開く。
人の気配はあるが、薄暗い部屋の中に足を踏み入れた。
ドアを開けた瞬間から目に入ったのは、ジュンの制作した絵の複製の山であった。
彫刻のレプリカもあれば、絵画の複製も幾つも同じものがコピーされ張られていた。
そして、ジュンの写真も。
「……相当悪趣味な野郎だな」
「複雑」
「気持ち悪ィとかじゃあねーのか?」
「こんなに私の作品を評価してくれているのは嬉しいけれど、複雑」
作品の飾ってある壁を横目に、部屋の奥へと
人の気配のする方へと2人は足を進めた。
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