「チャオ、プロシュート」
「………チャオじゃあねぇ、乗るな。」
二人が再会したのは、その二日後の朝。
寝苦しさから目を開いたら居たというわけだ。
これで会うのは二回目だとはいえ、血まみれのシャツにところどころ擦り剥いている痛々しい傷は、起きて一番に見るには心臓に悪い。
乗るなという言葉を聞いて、ジュンが素直に退く。
「二日来なかったからもういいのかと思ったぜ。」
「……二日?」
どうやら幽霊に日付の間隔はないらしい。
「お前が俺の前から急に消えて二日だ。」
「二日、二日も。」
「よく消えるが、その間何してるんだ?」
「何……?寝てる、見たいな感覚。」
「寝ている、な。」
それにしては随分と寝るものだと思いながら、この関係のない雑談をやめる。
しかし、二日あけてというのは都合がよく、プロシュートの任務がちょうど終わった非番であった。
「本題だ。」
そういってプロシュートは何枚かの書類をジュンの前に並べる。
どの書類にも2000年の5月の表記が見られる。
「これは?」
触れることはできるが、持ち上げ見ることはできないらしくジュンは並べられた書類をずらして読む。
内容は、どれも自動車事故による死亡事故だ。
「ここ二日で見つけた、この辺で起きたひき逃げによる自動車死亡事故だ。だがな、見て解る通りオメーのいう事件は見つからなかった。」
どの書類にある顔写真も、ジュンとは一致しない。それどころか、年齢すらもあわないものばかりである。
「考えられるのは、まずお前が事故った日を間違えている。次に、この辺の事件じゃあない。最後に、事故が誰の目にも触れることなく隠蔽された。のどれかだ。」
「警察に、もみ消されたとかは?」
「それはねえ。たとえ揉み消されていようと組織の情報網にはかかる。現にここにある事件の半分以上はもみ消されたものだ。」
半分以上がということを聞き、彼女はそれはどうなんだと神妙な顔をするが、その前に自分の事件がどのようなことになってしまったかのほうが問題であることに気づき、本題に戻る。
「日付は、間違ってない。」
「だろうな。いくら日付感覚がないとはいえ、自分の殺された日を忘れるわけがねぇ。だが、そうなると……」
「完全犯罪……?」
「いや、その前にお前生きてた頃どこに住んでいた?」
「……ここから、そう遠くないところ」
「そうか。今から行くぞ、そこに。」
「……え、うん。」
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