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あの日から、吉良さんとは会わなくなった。


今までこれでもかってくらいに会っていたのに、急にそれが途絶えた。



死んだ、とか捕まった、って言う連絡とかは来ていないから

私が避けられているってことなのか


…まあ、当然と言えばそうなのかもしれないけれど


でもそれ以降、何事もない日々があった。


吉良さんの居ない、前の代わり映えのない日々


だけど、私は何一つ納得できないでいた。

だから、吉良さんの家に向かった。


急に私の前に姿を表さない理由を聞きに。







学校帰りのバイト帰り

こんな遅い時間なら吉良さんは確実にいると思って、家を訪ねた。


「……居ない」


電気はついていない。

きっと残業


それか私なんか忘れて違う手の綺麗な人を見つけたんだ。


それならそれでいいじゃあないか、私は少なくともあの人と関わりたくなかったんだ。


殺されたくなかった。


彼女達みたいになりたくなかった。



普通でいたかった。

だからもういいんだよ。



「あの事を知った時点で終わっていたんだ」



だったらなんで教えたのか


「あの時殺されなかった時点で終わっていたんだ」


だったらなんであの時殺してくれなかったのか


「こんな気分になる時点で終わっていたんだ」


この感覚は、いつかの恋をあきらめた時と同じだった。


認めたくないけど、あの日々を楽しいと思ってしまった。


認めたくないけど、あの人に恋をしていた。

「……会えないとなると寂しいんですよ…」


保守的かと思えば突拍子もないことするし、
普通の人はしないようなことするし、


吉良さんは私の手しか見ていないし、何人の女の人を殺している

それを知ってなお私の気持ちは変わらなかった。



「もうあわなくなるなら…せめて一言くらい…」


要因、が欲しかった

理由を聞きたかった



「未來?」


後ろから聞こえた声は、幻聴かと思った。


「……吉良…さん…?」


振り向くと、吉良さんがいた。


「君が来るだなんて珍しい。何かあったのか?」


「何かあったのか、は私の台詞ですよ!吉良さん突然いなくなるから……」


「出張だが」


「え?」



すごくまのぬけた声だったと思う。


「あの日から直ぐに出張でね。君に言う必要はないかと思っていたが……その様子だと」

「う、いや、全然、来たのは……あれです」

「あれ?」


あれ…うん、あれ…あ……思い付かない


「と、とにかくあれなんです!連絡もなしにいなくなるから心配とかはないです」


うん、そうだ、そんなかんじ


「あまり深くは追求しないでおこう。今は…

せっかくだから上がっていくといい」


「…お言葉に甘えてそうしま「久しぶりに君の手を堪能したい、やはり写真なんかよりも実物のほうが」やっぱりやめていいですか」


久しぶりにあったからか、こういう人だったのを忘れた。


あ、はい、手ですねはい



「何、舐めたりはしない」


「その発想がある時点で問題ですよ」


改めてダメだこの人。

さっきまで悩んでいた自分が悲しく思える。

戸が開く、やっぱりすごく大きな家だな……。


「殺人鬼と二人っきり、覚悟はできているね?」


玄関に足を踏み入れようとしたときに吉良さんが言った。


「その殺人鬼さんの従妹ですから」


その言葉に私は笑顔で答えた。


そしてそのまま玄関に足を踏み入れる。


「…血は争えないな、未來」


たしかに、そうなのかもしれない。

あんなものを見て、なおこんな風にしている私は異常かもしれない。

しかも、好き、だなんて



「ちょっと前まではまだ普通でしたけど」


「今の君のほうがわたしは好きだ」


そう言われて一瞬ドキッとした。

きっとそういう意味じゃないのに。


「…好かれても困ります」


できるだけ、何事もないように言った。




十数年ぶりに再開した従兄は私よりずっと大人になっていて、変態になっていました。

そのうえ殺人鬼で、私の手のことを気にいっています。


もっと困ったことに私はその人を好きになってしまいました。


とんでもなく狂ってしまった私の日常はきっとこれからも狂っていくのだろう。





会えないとなると寂しいんです






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