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「ん…」


目を覚ますと見覚えのない天井が目に入った。


「ちょっと待って…今何時…」


ポケットに入っている携帯を取り出す。

10時半……学校は始まっている、完璧に。


まずはいったい何でこんなことになっているのかを整理しよう。



吉良さんがコーヒーをくれた



飲んだ



睡眠薬入りだった



寝た



ああ、そうか、やっぱり大体吉良さんのせいだった。


そう考えるとここが私の知っている場所じゃないってことは…



「おはよう、未來」


「やっぱりこの人の家かッ…!!」


それ以外どこってこともないけれど。


そして何より死亡フラグしか立ってないけれど。



「すみません、いろいろ聞いていいですか」


「何か気になることでも?」


「気になることしかないんですが…まずここはどこですか」


「わたしの家だ」



ああやっぱり、終わった。


「なんで私吉良さんの家にいるんですか…?」
「ぼくが連れ去った以外になにがある」



平然と連れ去ったとかいったよこの人。


これ一応誘拐に入るよ絶対。


「…吉良さん仕事はいいんですか」


「君といるためなら一日くらい有給を普通に使うよ」

…全然嬉しくないどうしよう

そしてなにより、駄目だこの人はやく何とかしないと。



「とりあえず私学校に行かないといけないんですけど」


「その点なら心配はない、今日は風邪で休みということにしておいた。」


「あんたは付き合い始めのカップルの彼女かッ!!変に根回しきちんとして!!」



退路を完全にふさがれてしまった。

でも、貞操の危機とかは感じない。

いや、そんなことよりももっと恐ろしいことが起きる気しかしない。




「…逃げなきゃだめだ逃げなきゃだめだ逃げなきゃだめだ逃げなきゃだめだ逃げなきゃだめだ逃げなきゃだめだ逃げなきゃだめだ」



「セリフ、間違えてる「仕様です、てか本当に逃げていいですか」」



貞操とかじゃない、この人は確実に手狙い。


手を切り離される心配だってある、ここまで執着的なら正直やりかねないと思う。マジで。


「逃げるも何も、どこに逃げるつもりなんだ?」



「……」


家、は駄目だ。

だからって学校もダメときた。


「別に取って食おうとしているわけじゃあない、いくら手がとても美しいとはいえ今手を出すのは時期尚早。」


「いつかはなんかするってことですか、そういうことですか」


笑っているけれどこれは怖い。

逃げたいけれど逃げられない、作り物の映画とかなんかよりもとんでもないホラー。


もうこの人から自分の手を遠ざけたい、とにかく。



「と、とりあえず何がしたいんですか。手が目当てにしても何かあるんですよね」
「…なに、簡単なことだよ」


「やめて!その笑い怪しい!嫌な予感とかいうレベルじゃないです!!


……え?」



差し出されたのは、つめきり。


いや、私の爪は伸びていない。


切れってわけじゃないとするといったい?



「…これ、なんですか」


「爪切りを知らないのか?」


「いや、それは見ればわかりますよ。じゃなくて!それをどうしろと!?」


「わたしの爪を切ってほしい」


「…はい?」


そういって吉良さんは私に手を差し出す。


確かに、結構爪が伸びている…


「じゃないッ!!なんで私が切らないといけないんです!?」


「君の手がいいんだ」


君じゃなきゃだめなんだ系のセリフだというのに全く嬉しくない不思議。


「…それやったら帰っていいですか」


「ああ。」




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