エイプリルフールに大好きな人をだましてみた


「よーし、騙すぞ!」


気合を入れて、カキョに電話をする。承太郎が引っかかったほどならカキョが引っかからないわけがない!
……基準がおかしいとか言われても気にしない。


電話をかけて、もし逆に嘘をつかれたらどうしようかなんて考えながら待つ。

その前にもし出なかったらの方を考えた方がいっか……。


『もしもし、ななし?どうかしたの』


「カキョ!あのさ………」


っと、ここではしゃいでいたら今から4月1日だから嘘つきますよ感がでちゃうか。

とりあえず、落ち着いてここは日常会話のような話から始めて一番の嘘を投下すべきだね。


「今日有名人見たんだよね!すごいでしょ」


『それは良かったね。』


……ってこれ日常会話じゃなくってさっきの流れまんまだ!
もういい、とにかく嘘をついてみよう、この流れじゃ何のために電話したの?だ。


「と、それはそれとして。実はね私結婚するんだ!」


『……え?』


ケータイ越しの声が止まる。お、これはカキョも騙された?



「なーんてエイプ『そうだったね、式場どこにするか決めた?』えっ」


なーんてエイプリルフールでしたという声を遮って、カキョはそんなことを訊いてきた。
式場?なにそれ、式場の人に訊かないとわからないよ……じゃないなにこれ嘘返し?


『まだウエディングドレスとかも決めていないしね。』


「あの……花京院さん?何言ってるんですか?」


さすがに話が飛躍しすぎて、わけがわからなくなってきた。

なにこれ、どういうことなの?


『何ってななし結婚するんだろう?』


「いやそれは……『残念だけど、エイプリルフールの有効期限は午前中だよ』」


そんなルールあったんですか!?聞いてませんよ!?

時計を見ればとうに12時は過ぎている。つまりエイプリルフール有効期限は過ぎていることになる。


「いやいやいやいや、ちょっと待ってじゃあカキョももう嘘ついちゃだめだよ!」


いくら私が騙そうとしたからといえ、すでに有効期限が切れているならそれは……


『僕の言ってることは嘘じゃあないから問題ないけど?』

「あー、嘘じゃないなら問題な………」


くない。くない。全然くない。何を言っているんだこの人!
だって、それじゃあ……


「って、何言ってんの!?」


『でも、最初に言いだしたのはななしだよ?』


「そ、そうだけど」


確かにそうだけど、エイプリルフールだから言ったの私だけど。


『もしかして、僕とは結婚したくないとか?』


「そんなことないよ!結婚できるなら……カキョとしたい………」


あああああああああああああ!電話越しとはいえ私は何を言ってるの!?これただのプロポーズになってるよ!


『だったらなにも問題はないね。僕はななしと結婚したいし。』


「う……あ……」


ストレートになんてことを……恥ずかしくて言葉もうまく出てこなくなってきた……。

そんな調子の私に、ケータイ越しにカキョが笑っているのが少し憎らしかった。



「案外意地悪だよね……カキョって……」


『そんなことないよ。』



その後本当に結婚前提の話をしていて、それをホリィさんに聞かれて妙に祝福を受けてしまったのはまた別の話。




――エイプリルフールに大好きな人をだまして見ようとしたけれど、逆手に取られてしまった。





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