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「『何でも一回だけ命令に従います券☆』……なんですかこれ」
裏面を見たななしは心底あきれた顔で言う。
「そんな顔をされても、差出人は君だろう」
「は!?」
急いで文面の下を見ると確かに、ななしと自分の名前がかかれている。
しかし、ななしにはこんなものを書いた覚えもなければ、筆跡も全く違う。
「いや、私こんなの書いてないです」
「筆跡が違う時点でそれはわかっている。」
「だったら……」
なんで最初にあんなことを言ったのか、そう言いたかったが言葉が止まる。
そう、気づいてしまったのだ。
目の前にいる男が微笑しているのに。
知っていてやっていることに。
「せっかくのプレゼントは使ってみたいと思わないか?」
「いいえ、全く」
答えながらななしはゆっくりと後退りする。最初の言葉で直ぐに家から脱出すれば良かったと後悔した。
「なに、怖がることはないよななし……君を殺したりする訳じゃないからね」
吉良が一歩歩み寄ろうとした瞬間に、ななしは走っていた。
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