-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ
Cucinando



もしものもしも、突然すべてを失ったとして。

―少年は、ただ黙ってその惨状を見ていた。

絶対にそれだけは取りこぼしてなるものかと思っていたものが
たやすく崩れたとして

―少年は何も言わず、その死体を見ていた。

一瞬のうちに、世界が変わってしまったとして

―少年はすべてを悟ると、その場を立ち去った。





「………ん…?」


多少の寝苦しさを感じながら、彼女は目をこする。
時刻は朝の8時。学校も何もない彼女からするといたって自然な目覚めの時間である。

何があったかを思い返す。
昨日はイルーゾォについていき必要な衣料品を盗……もとい拝借し、帰路に着いた。
イルーゾォの警戒心も薄れ、その日も大変いろいろなことがあり疲れていた由紀は、
朝まで書類仕事をするといっていたリゾットの部屋で寝たのだった。
結局、どこで寝るかということはいまいち決まっていない。


昨日起きたことを軽く整理して起きる。最初は緊張、昨日は疲れで気づかなかったがこの部屋ではどうにもよい香りがするのに気が付いた。
気が付いたからと言ってどうということではないが。


「おはよう、リーダー」


起きて自分のスタンドを一瞥し、デスクの方を見るとこの時間にもまだリゾットはそこに変わらずいた。
ここまで寝ていないことを考えると、疲れも見せずそのままなのはすごい気がする。


「ああ、Buon giorno.よく眠れたか?」

書類から一度目を離してからこちらを向きリゾットはそう由紀に言う。
疲れて熟睡していたのだからその問いの答えははいだろう。
ぐっすり眠れたことを伝えると、リゾットはそれはよかったと頷いた。

ベッドから降りて、昨日拝借した衣服が袋に入ったままに置かれている。
持ってきたそれはいつでも着ることができる。その中から一着今日着る物を選ぶ。
洗面所の場所も覚えたところでそちらに由紀はむかおうとした。


「朝食はテーブルに用意してある、適当に食べておいてくれ。」

「了解でーす!ありがとうございます」

部屋を出ようとしたときに言われ、それに感謝してから部屋を出る。
何から何まで世話になって居る分、自分に課された責務は果たそう、そう思った。

リゾットの部屋、ギアッチョの部屋、リビング、洗面所、まだ覚えていない部屋の方が多いが、最低限暮らせる範囲にはなってきたと思う。
由紀は階段を下り、洗面所に向かう。
洗面所に誰もいないことを確認して着替えを始める。
そういえば、洗濯も仕事内容には入っていたが、
この洗濯機の使い方を聞いていないし、どのタイミングでするべきかも聞いていない。
また聞いてからやろう。
などと今後のことも考えながらパジャマを脱いで洗濯機に入れる。


「まだそんなに入ってないけど……」


洗濯機の大きさが自分の家にあったものよりもだいぶ大きいこともある。
好きなタイミングでしていいのなら、こまめにやろう。
大所帯だとすぐに満杯になりそうだ。

そんなことを考えながら、今日は何を着るか見繕っていると


ガチャリ、とドアが開いた。






非番の日、であろうと別に遅く起きるつもりはなく、
だからと言って仕事のあるものはとうに出発した時刻。

「ギアッチョ、飯食い終わってヒマならさっさと洗濯物出しとけば?」

そんな時刻、メローネが唐突にそんなことを言った。
普段ならそんなこと、
人のことをわざわざ言わないというのに、珍しいこともあったものである。

「言われなくともわかってるぜ。つーかなんだよ突然」

その態度にかなりイラつきつつも、
ギアッチョは確かに洗濯物がたまっていたことを思い出しそこは素直に洗濯物を出しに行くことにした。

「いいや、ふと思い浮かんだから言っただけさ」

その言葉を聞いて、そのままリビングを出て部屋に戻る。部屋に戻ってすぐに洗濯物をまとめると、洗面所に向かいドアを開ける。

もちろんノックもしなければ、中に誰かいるかなども全く考えずに。





「お前にしては珍しいことするんだな」

「あれ、イルーゾォいたんだ」


お前がここに来る前からいたといってイルーゾォは鏡から出る。
すでに朝食も終えていて、仕事が夜に入っているイルーゾォはヒマそうだ。
ヒマついでに、メローネの今の行動に何の意味があったのか尋ねる。

するとメローネは、ニヤッと笑って


「まあ、それに関してはちょっと待ってなよ、面白いことが起きるから。」


と、言って洗面所のある方を指差した。




ドアを開けてギアッチョが見たのは、いつものサイドテールはほどき、ふわっとした赤いロングヘアの髪、室内でも来ている緑のコートを脱いで、さらには下着姿の由紀だった。

「…………」

「…………」

ばっちりと目があって沈黙。
10秒、いや5秒だったか、その間は長くも感じられた。


「〜〜〜〜っ」


先にすべてを察し、わなわなと身を震わせて顔を真っ赤にしだしたのは由紀だった。


「っ、ワリィッ!!居るなんて知らなくって」


ギアッチョが慌てて謝るも由紀は口をパクパクさせている。
両者混乱状態にある。


「は…」

「は?」

「早く出ってってよッ!!なんでずっといる上に見てんのーーーッ!?」

ようやく出た由紀の声。
それと同時に由紀のスタンドによってギアッチョは半ば突進される形で洗面所から追い出されたのだった。



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