-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ
Mattina



真っ白な夢を見た。

寒さは、嫌いだ。冬になったら外に出たくないくらいに大っきらいだ。
まず雪が嫌いだ。人にまとわりついて、勝手に溶けて、水になったら蒸発して熱を奪っていく。
次に、自分の吐く息も嫌いだ。つまりは、体温を下げる要素全てが嫌いだ。


「………」


寒いのは、どうしようもなく嫌いだ。寒い中で一人でいるのなんて耐えられない。
本当に、一人ぼっちになったことが無いから。そんな弱い人間だから。


寒い寒い冬の夢を見た。一人ぼっちで真っ白な道を歩く夢。

街灯にうっすらと照らされた雪の上をひたすら歩いて、歩いて、雪の上に倒れこみそうになるそんな一人ぼっちの夢。






「………今何時?」


由紀が目を覚ました時、窓からは朝日が差し込んでいた。

何よりも、知らない天井である。そこで、何があったのかを整理する。
確か、勝手に休んでいろと言われどうしようかと思っていた結果ベッドでいつのまにか寝てしまったのだ。
そして、過去のイタリアに来てしまった事を思い出し、夢ではなかったかと落胆した。


それにしても変な夢を見てしまったと由紀は考える。
今の季節は、春。それはどっちの世界でも同じだった。
なのに、冬の寒い夢を見た。自分の嫌いな季節の夢であっただけに、少々気分が落ちる。


「私、布団かぶってたっけ?」


適当にかけられている布団。寝相が悪いということは無く、彼女に布団をかぶって寝た記憶はないので、適当にかけられたというのは正しい。

ベッドのすぐ横床を見れば、彼女のスタンドが、彼女が起きたことに連動して起きる。


「あ、」


ベッドから起きてよく周りを見ると、ギアッチョが部屋にあったソファーで寝ていた。
この部屋に来たのが夕方ほどとして、なんやかんやで朝まで寝てしまったというのは色々あっていつの間にか自分が疲弊していたという事かと彼女は考えつつ、ギアッチョに悪いことをしてしまったと思っていた。

寝心地悪そうなところに長い時間居させてしまったと。

それも、掛けるものもなく。春とは言っても、まだ肌寒い。それはイタリアも同じことだ。


「……」


これから自分は起きるからいいとして、彼女はそっと彼に自分が今までかぶっていた布団をかけた。

起こさないように、そっと、丁寧に。


「ソード、Come」


流石に、ソファからベッドに移動させることは不可能なので彼女は出来ることだけして部屋を出た。






「おーぅ……」


リビングについて由紀は早々に声を失う。

見る限りの瓶の山。酒瓶の山。それどころか、倒れて寝ている人もいる。
この状況から推測するに、昨晩は酒盛りというところだろう。いや、毎晩そんなもんかもしれないが。

ここでようやく、掃除がどれだけ大変そうかというのを確認したのとともに


「……お腹、すいたんですが」


誰に言うというわけでもなく、この状況に苦情を漏らす。

やれやれと思いながら、誰か来るまで酒瓶を片づけつつ待とうと由紀は思うのだった。

さすがに、いくらお腹がすいているとはいえ、勝手に人の家(?)の冷蔵庫を開けて何か作ったり食べたりする気にはなれなかった。それに、イタリアと日本では料理の仕方や色々とが違うかもしれないし。


アルコールの匂いと、日本食にはないトマトやらいろんな香辛料の匂いの混じった場所で、由紀は地道に片づけを始めた。



由紀が皿を重ね、割ったらそれは一番まずいことなので自分の安全に持ち運べる分を少しずつ流し台の方に持ち運ぶ。
酒瓶の方は彼女のスタンドが器用にも咥え、ひとつの場所に固める。


「えっと、こっちの床で倒れてるのがイルーゾォさんで、ソファで寝てるのがメローネさん、だよね、うん。」


起きた時に名前を間違えたりしてはいけないと名前を自分の中で整理する。
他に人がいないのは、他の人はもうすでに任務に出たりしているということだろうか。


と、その前に


「私よりも3歳上とか、いってたよね?」


イルーゾォはわからないが、メローネが昨日自分の年齢を聞き3つ違うと言っていたことを思い出す。
それは、普通に考えて彼の年齢が17ということだ。17、17は未成年のはずであり、こんな風に酒を飲んでも良い年齢かどうかということを考える。

しかし、それは日本の話でありイタリアでは16歳になれば飲酒は合法だということは由紀は知らないのであった。



「Buon giorno.早速やっているか」


「うわっ!?」


後ろから突然声をかけられ、由紀があられもない声を出して驚く。
振り向いてそこに居たのは、リゾットであった。


「そんなに驚くことはないだろう?」


「いや、だって、急に後ろにいられたら誰だって驚きますよリーダーさん!」


「この程度すぐに気付かなければ……やはり、訓練は必要か」


「いや、だから誰だって驚きますから。女の子は」


どこまでもこの人天然か。と由紀が思っていると、リゾットは皿の片づけ方と酒瓶の片付け場所を説明する。
しかし、ギャングのチームリーダーが、そんな片づけをいつもしていたのかと考えるとどうしても笑いそうになってしまう自分が居て由紀は笑わないでいることに必死だった。


「……なにか変なことでもいったか?」


そんな態度に気付いてか、リゾットが由紀に訊く。


「あ、そう言う意味じゃあないんです!なんていうか、えっと」


ギャングのチームリーダーに家庭的、というのはまた微妙になってしまう。
だからといって、そんなことをしているなんておかしい、ではただの悪口になってしまう。

褒め言葉を探すうちに、結局由紀が言ったのは


「いいお嫁さんになれそうだなって!」


一番微妙な、下手したら一番あれな褒め言葉(?)であった。


「………」


「………えっと、すいません」


「……いや、まあ、ありがとう」



微妙な空気が二人の間に流れた。


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