-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

relazione



「自動追跡型のスタンドは、基本的にそのスタンドが受けたダメージは本体にはいかない。
それどころか、スタンドに何があったのかも本体にはわからない。だからこそ、あれを倒してしまっても試験には何の問題もないの。
そしてあの「矢」は……一般人の素質あるものをスタンド使いに返る「矢」…。」

矢。素質のないものは死に追いやる。
それを思い出して、由紀の言葉は消え入る。

「……本当に、本体には何も分からないのか?ぼくがスタンド使いだと言うことも」


「感じたとしても、せいぜい手が重くなったってことくらいさ。だけどぼくらがスタンド使いだなんてこと、わかるはずがない!
ねえ!すまないけどこの指どけてくれないかな」


そんな由紀を思ってか、ジョルノの再三の問いに康一が答える。
そして、そのついでに電話を止められている事に講義する。

「悪いが、電話をかけさせるわけにはいかない。」


一体どこにかけるのか、どこにかけるとしても、この地で電話をかけた内容がどこの誰に聞かれてるともわからない。

「これはお願いだ。敵は一人じゃない「組織」なんだ。
君が誰かにしゃべればそこからバレる可能性がある。」


ジョルノは、康一にギャングになる事を話した。
日本の高校生にそんな事を言っても、当たり前のことだが正気を疑われる。

しかし、犠牲になった者を見るジョルノの姿が、誰かに重なった。

そう、康一と由紀にはその姿、目に、ジョースターの意思を感じた。


「ここから離れよう。このままとどまっていれば警察に突き出されかねない。」


ジョルノの提案で、三人はジョルノの部屋に戻る。

ライターを消えないよう固定して机の上に置くと、最初に口を開いたのは

「あの、康一お兄ちゃん……信じてくれるかわからないんだけど」





自分が花京院由紀であること、ここにはとあるスタンド使いの能力で来てしまった事、そして、その前に世話になった人たちのためにギャングになる事。


「君が由紀ちゃんだってことはなんとなくわかったよ……スタンドはあれから大きくなってるけどそのものだし、立ち振る舞いとか典明さんに似てるし…でもさ」

「で、でも?」

康一が険しい顔をする。
なにか、問題でもあったのだろうか……不確定要素だけでは信じる事は出来ないと

そう、拒絶されてしまうのか


「未来の由紀ちゃんがギャングになりました!なんてぼくはどう典明さんに説明すればいいんだッ!!」

「そ、そこ?!」


たしかに、伝えにくいというレベルの話ではない。
海外で、ギャング。日本で不良ですら卒倒ものであろう。

康一に根掘り葉掘り何があったのかを問いただされる。
こんなところで知り合いに、それも自分を信じてくれる知り合いに会えるだなんて思っていなかったので由紀はその答えに困る。

「まあ、とにかく二人は知り合いだってことなんだろう?」

そんななか、話を聞いていただけだったジョルノか口をはさむ。

そして、由紀にライターを渡すと


「康一くんは旅行者と言うこともあってホテルもある、丁度いい宿ができたじゃあないか、由紀」

「え?いや、困るよォー!ぼくが典明さんに殺され」


また明日、という声が聞こえたと思うと部屋から出されていた。




「ええっと、一人部屋だから……ぼくがソファで寝るからね」

「あ、いいよ!私がソファで!!勝手におじゃましちゃったんだし。」


ホテルに着いて、康一はジョルノから返してもらったお金(明らかに全額ではない)で買った必要品を置き、部屋の様子を見て由紀に言った。
色々譲り合いはあったものの、結局は康一の方が疲れているという理由でソファに寝るのは由紀となった。

「それにしたって、「矢」の事もあのジョルノの事も、君の存在だってここは異常な事ばかりだよ。ああ、そうだった!君の事は承太郎さんに、というか典明さんに「そ、それはやめて!」」

ホテルの電話を取った瞬間、今度は由紀がフックボタンを押して止めた。

「なんでさ!?」

「そのスタンド使いは、もうそばにいない。それに、そのスタンド使いは協力してくれた人だし……大体」


そこで、由紀の言葉は途切れる。
すこし、考えるようにして、そして、何かをこらえるようにして、
そうして絞り出された言葉

「私を、私と信じてくれるかな?」

その声は、少し震えているような気がした。
それもそのはず、康一は信じたけれどもはたして、だからと言って他のものが信じるのか?
14歳の、未来から来た花京院由紀という存在を。


「完全に私のわがままなんだけどね、私、お父さんたちから「お前は娘なんかじゃあない」って言われるのが一番怖いの。
普段、私の事を愛してくれる人だからこそ、それが怖い」


由紀は両親に愛されて育っている。それは、康一もよく知るところだった。
だからこそ、彼女の言い分がわかる。

分かったからこそ、受話器を元に戻した。


「ありがとう、康一お兄ちゃん。」


そんな康一に、由紀は感謝した。

「そうだ、そういえば……君とジョルノ・ジョバァーナはどんな関係なんだい」

しかし次の瞬間、ハッと何かを思い出したように康一は由紀に訊く。
また、父親関連の親ばか的なチェックのためかと思い、由紀は苦笑しながら

「友達であり、協力者、かな?いい人なんだよ!……あ、うん、康一お兄ちゃんの荷物は盗んだりするけど」

答える。
そう答えた由紀を、康一は複雑そうな表情で見ていた。
そして、それに気付いた由紀は、何事かと康一に訊き返す。

数回曖昧に返されたものの、何度か訊き返すと、言う決心が固まったようで



「落ち着いて聞いてほしい。あのジョルノの父親は……杜王町の「矢」の原因にもなって、君の両親とも関わりの深い……あの、DIO…ディオ・ブランドーなんだ」


ライターの炎が、大きく揺らめいた。



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