-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

relazione



由紀の制止の声もむなしく、その声が響いた時にはジョルノの足はあの敵スタンドにより掴まれていた。


「と……鳥だッ!飛行する鳥の影を利用して影から影へ移動してきたッ!」

先ほどのカラスの声を思い出す。

そう、影さえあればどうにでもなるのだ。日光のもとにさえ出なければ、このスタンドは。

ジョルノのG.Eの蹴りもなにも敵スタンドの前では悪あがきにしかならない。
融通が利かないとはいえ、その単調な純粋な強さが自動追跡型の最大の強みなのだから。


「……ッ!ソード「待って――、ACT3 FREEZE!!」」

だからこそ、不意打ちに似たようなスタンドをぶつければ、と由紀は考えた矢先にその行動は止められた。
康一のスタンドがそれよりも先に敵スタンドの両手を重くしたからか?否、それは違う。
その直前「待って、由紀ちゃん」と、そう言われたからだ。

『ソイツノ「両手」ヲ重クシタ。地面カラ指一本立テラレナイホドニネ!』

エコーズの声で由紀は我に返る。
敵スタンドの行動は、両手が動かないがために止まっている。

このまま、一度影の中に逃げ込めば……


「うぐっ」

ジョルノが苦痛の声を漏らす。
そうすべてが思い通りに行くことはない。
G.Eの両足を放そうとしないのだ。
つまりは、地面をも砕くようなその重さがG.Eの足にもかかる。
重さと敵スタンドの力が加われば、このままジョルノの足が砕けてしまう。


「指を放すはずだッ!こいつの『手全体』を重くしたんだッ!たとえ影の中に逃げ込むことはできても、
指を曲げてなんかいられないはずなんだッ!」


何が何でも、ジョルノの足を放すつもりはない。
それどころか、まだ矢で狙ってくるほどだ。

「康一お兄ちゃん!ジョルノ君の足が!!」

執念深いのも、自動追跡型の強みだ。
だからこそ、本体をたたきたいがそれもできない。

「ッ、ACT3 3FREEZEを解除……」

「いや、そんな事はするな!これが「いい」んじゃあないか!康一くん!」

「「え?」」

解除を止めたのは、このままいけば足が砕けかねないはずのジョルノであった。
これがいい、という発言に二人はついていけないでいる。

「この「重く」なる能力、解除なんかとんでもない!!!
これがいいんだよ!君がやってくれたこの能力が「いい」んじゃあないかッ!」

「で、でも、ジョルノ君!そのままじゃあ」


その時、バキィとすごい音がした。
まるで、何かが折れる音。

それは、ジョルノの足の骨が折れた音か?
いや、違う。康一と由紀が音のした方を見ると、木が折れていた。
砕けるように、大きな枝が。
そして、それに続き葉も全て風に流れ散っていく。

まだ、春だと言うのに。


「『ゴールド・エクスペリエンス』は生命を与え続ける能力!
だからあの木は成長を続け、そして一生を終えて……枯れ始めている!」


「!?能力だって!君の『スタンド』は動けないじゃあないかッ!あの木までは10m近……」

それはそのはずだ。ジョルノのスタンドは見ての通り近距離型。
10mもあるその木に能力を使う事なんてまず不可能だ。

「これがいいんだ!このすばらしい君の「重く」する能力がッ!石畳に「穴」を開けてくれたおかげで」

「穴を掘って『木の根』をたたいたのかッ!」

木は急成長からの老化を続け、そのままもろく朽ち果てていく。
木が木の形を保てなくなったその時、影もまた崩れ、日光にあたったスタンドも悲鳴を上げて崩れていく。

「や、やった!「影」が取り除かれたッ!太陽の光に引きずり出したぞッ!」

日光に曝され、行き場を失った敵スタンドはどうにか日の当らない影を探して這いずる。

「向かうべき道が「2つ」あるって言ってたが……おまえにはそんな「多い」選択はありえないな。」

G.Eが敵スタンドの前に立ちはだかる。

「ゆっくりとあじわいな、日光浴を!」

そして、日光に当たった事によりボロボロに弱体化したスタンドにラッシュを喰らわせると、そのまま敵スタンドは消えていった。

「たったひとつだけだ。お前の行くべき道は!」

落ちたジョルノのライターの火は消えていない。

また消すわけにはいかないのは百も承知である。

「とはいえ……どうしたものか……?「組織」に入団できるのだろうか……?困った。」

「多分それは大丈夫だと思うよ。」

そう言って由紀はソードから自分のライターを取り出す。
安全地ならこうしておく方がいいが、先ほどのように戦闘となるといささか不便だったと思いながら。


「それよりもッ!あの「矢」!!あの「矢」と同じものがこのイタリアにもあるってことは!
まだ「矢」に刺された「犠牲者」がどんどん増えると言う事ッ!」

そういって康一はすぐ近くにある公衆電話に駆け寄る。
そういえば、何故ここに康一がいるのか、どこにかけようと言うのか、それは一切由紀にはわかっていない。

「電話しなきゃ!日本に知らせなくては!」

そういって電話をかけようと、康一がダイヤルボタンを押したところで、ジョルノはフックスイッチを押してそれを阻止する。


「な……何をするんだい?」

「今君は「増える」って言ったのか?「矢」を持っていたポルポのスタンドは見ての通りやっつけたぞ」

「違うよ、ジョルノ君。倒せたんじゃあない、撃退できただけ。」


真直ぐ、ジョルノを見据えて由紀が言う。
同じようなスタンドだからこそわかるのだ。

あれが、完全に消滅したわけではない事くらい。




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