-->
私にとっては過去の出来事だ | ナノ
conoscente
「スタンド使いを増やす矢?」
その存在を聞いたのは、10年近く前。
多分、杜王町にいた時。父親から。
「そう、それを使う悪い人が居るんだ」
「使ったら悪いの?なんで?」
スタンド使いが増えるのはいいことだと思っていた。
何より、由紀はスタンド使いの知り合いと話していると楽しいし、父親もスタンド使いの知り合いと話しているときが楽しそうに見えていたからだ。
なにより、スタンド使い同士じゃあなければ、本当にわかりあえる存在になんてなれないと幼心に由紀は思っていた。
けれど、そういうと父親は苦笑した、
「味方のスタンド使いが増えるのはいいことだね。
だけど、矢を使ってスタンド使いにするのは、僕や由紀と違って無理やりスタンド使いにするものなんだ。
僕らみたいに元々スタンドを持っていたりしない人でもスタンド使いになれる。そのかわり、誰でもなれるわけじゃあない。なれなかった人は、死んでしまうんだ。」
「死……」
とても怖い話。
そして杜王のスタンド使いのほとんどがこの方法と聞いた。
本当に目の前で矢で死んだものを見た事があるわけではない。
だからこそ、怖いとは思っても、どこか遠く離れた事だと思っていた。
※
「バカなッ!きさま!……何をやっているんだッ!」
「わかった……わかったよ!ブチャラティがなんでスタンド能力を持っていたのか…!!その矢だったんだ!」
由紀の叫びは、悲痛な感情が混じっていた。
…目の前で見るまでは、敵を増やさないための脅し半分なのだろうと思いたかった。
けれど、事実は違った。
本当に、自分の理解者であるスタンド使いを増やすようなものではなかったのだと理解した。
「…ッ、この矢が…!?」
「私が日本で見たのと同じ…とにかくその矢はかなり危険だし、そのスタンドも「お前も『再点火』したな?
チャンスをやろう!『向かうべき2つの道』を!」ッ?!」
移動した素振りなど、ジョルノも由紀も確認できなかった。
いつの間にかスタンドは由紀のすぐそこ、腕を伸ばす。
自分のスタンドを出そうにも、まだ帰ってきていない。すぐ手元に帰って来ない、自分で回収もしくは帰るのを待つのが自動操縦にちかい自身のスタンドの弱点と改めて思う。
しかし、どうやって…、その移動の方法が理解出来なかった。
「由紀!ゴールド・エクスペリエンスッ!!」
引っ掴まれ、その上矢を刺されようとしたところでジョルノがその矢をそのスタンドの手で止める。
本来スタンドはスタンドの攻撃でなければ傷がつかないはずだ。
特に、ジョルノのような像のあるスタンドはそのはずである。
それなのに、その矢はG.Eの手を切り裂き、破壊してしまいそうなほどの威力を持っていた。
こんなものをまともに受けてしまえば、どうなるのかは明白。
「やむを得ない……このジョルノ・ジョバァーナには夢がある!たとえポルポが僕の入団しようとしている組織の幹部であろうと……」
防戦一方であったG.Eの矢を掴んでいない方の片手が、敵のスタンドの顎を撃ち据える。
「僕らの夢を阻み、あのじいさんのように関係のないものをゴミクズのように殺す奴であるのなら……倒さねばならない!!!」
そしてそのよろめいたスタンドが体勢を立て直す機会も与えずに、G.Eはラッシュをたたきこむ。
階段から落ち行くスタンドを見て由紀は考える。
このスタンドは間違いなくポルポのスタンド。しかし、ポルポはあの刑務所から出られるわけがない。
だいたい、あの体型でここまで来る事があるわけがないのだ。
だが、このスタンドの強さ。間違っても遠距離型ではない。
ならば、答えは一つ
「ジョルノ君!そのスタンドは普通の攻撃でダメージを与えられるようなスタンドじゃあないッ!!」
自動遠隔操作型、由紀のものと似たスタンドであれば、滅多なダメージでないと倒せない。
由紀がジョルノに行ったのと同時、階段から落ちて行ったはずのスタンドはその姿を消した。
「そんな、消えるなんて……普通じゃあ倒せないスタンド…それが正しいとしても、あのパワー…もう捕まるわけにはッ、」
周りを警戒するにも、二人にはあのスタンドがどうやって移動したのか、消えたのかその一切が分からない。
警戒を続ける二人、その時
由紀の首筋に、何かがふれる感覚がした。
「なっ、あッ!?」
逃げようにも、振り払おうにもまるで自分の体が自分のものじゃないかのように動かない。
そして、その不思議な感覚の正体がつかめた。
『影』
そう、影だったのだ。影にそのスタンドは居た。そして由紀の影から魂を引き出している。
「ッ!その娘を放せッ」
気付いたジョルノが、間髪いれずにG.Eの拳をたたきこむ。
影の中を瞬時に移動できる能力。
今襲われたことで確信できたのはそこだ。
「……!まさか、あいつの弱点は……」
攻撃でふき飛ばされた敵スタンドは、今度は正面、階段のない方向に落ちて行った。
由紀にはそれを確認できる余裕がなかったが、確認をしたジョルノは確信を得たように呟いた。
「だとしたら……由紀、この戦い、日没までにつけなきゃならない!」
Prima _ prossimo
ritorno
Segnalibro
(65/71)