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私にとっては過去の出来事だ | ナノ
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「あ、そうだ!」
「!?」
「ここまできたら多分大丈夫だよね」
小声で言うと、由紀はソードを小さくして出す。
外を歩くよりも小さい小型犬程度だ。
「ソード、消しちゃだめだからね。」
そういって口の中に入れる。
それを唖然としてジョルノはみた。
「き、君は、なんて」
「ジョルノ君もどう?絶対消えないよ」
ただし、攻撃手段が少し減るけれど。と呟いて訊く。
「……遠慮しておく。自分の力だけでどうにか「面会人はゲートをくぐったら再びボディ・チェックを受けてください!」え?」
それは予期していない事だった。
ここまで来たのだから、あとは何事もなく返してくれると思っていたのだ。
「館内を出てもよいという許可が出たら次の部屋に進み自分の所持品を受け取ってください!」
一瞬どうしたらいいかわからず呆然としかける。
「っ、ジョルノ君、ジョルノ君もソードに」
由紀のスタンドに一度置いて、出てからスタンドはどこかしらのすき間を縫って出てくればいい。ライターが通る穴さえあればスタンドは物を透過出来るのだからそれは可能だ。
「!!
動かないでください!警告しますが彼から何かを受け取ることは禁止されています!」
スグに隠す前に、その行動を止められる。
「『面会人』!そちらの方から両手を上げて前へ進みなさいッ!!」
万事休すか、ジョルノから指名されてしまい八方ふさがりとなる。
火の付いていないライターであれば先ほどのジョルノの技能があればどうにでもなったであろうが、火のついたライターともなればそれは別である。
刑務官のボディ・チェックが始まる。
それを、両手を上げてうけているが、手は閉じている。
それはつまり……
(ジョルノ君の手から……なんか、煙が……)
火を手の中で隠すだなんて無茶である。
消えないにしても火は火。当ったものを燃やす。
発火しないにしても、やけどの痛みはすごいであろう。
それでも、その痛みを顔に出さずにこのボディ・チェックをやってのけている。
「OKです。何も問題はありません。ここを出ることを許可します。」
その言葉に、由紀もジョルノもほっとした。
「ただし、手のひらも開けて見せてください。」
のもつかの間、本当につかのま。
(そ…そんなのって……)
やけどの痛みもこらえたっていうのに。
これが現実は非常と言うやつなのか…。
依然ジョルノは手を開かない。
そんなジョルノにしびれを切らせて刑務官はジョルノの手を握り、強く警告しなおす。
そして、少し間をおき、開けた手の中には
「……花」
それがジョルノの能力によるものだというのに、由紀はスグ気付いた。
そうか、そんな使い方も
刑務官はそれを手に取り確認し、それが本当にただの花とわかると
「まあいいわ。本物の『花』。この程度なら許可しましょう。では…次はそこのあなた」
「あ、は、はい。」
何事もなく花を受け取って退館するジョルノを見て、やっぱりとんでもない人なんだろうなと、由紀は思うのだった。
※
「…よしよし。」
ソードの口の中のライターが消えていない事を確認し、由紀はソードをなでた。
「……とりあえず、まずは風のないところ…とにかく落ち着ける室内に行こう。」
それもそうだ。外でいつ強風に煽られて火が消えてしまうのかわからない。
由紀はそれに賛成するが、落ち着ける場所。
それはその辺のファストフード店で良いわけでもない。
話す内容が、話す内容なだけに。
「君の家は…どこ、と言う前にある?」
その問いに、由紀は首を横に振る。
色々な出来事がありすぎて忘れていたが、またここで家がない状態だった。
今度こそ行き場がない。
少なくとも、組織に入ってあのチームの事がわかるまでは。
「…じゃあ付いてきて。一日くらいはなんとかなる」
「えっと、どこ?」
「学生寮。」
※
「おっジョルノ!良いとこ来た!カメラのシャッター押してもらえっかー?」
「いやです…」
クラスメイトか何かは知らないが、声をかけてくる人物を無視して進むジョルノに由紀も付いていく。
「あ……すまんけど、ちょっとこのドア開けてもらえませんかな……?バケツの水がこぼれちまうもので……」
「あしたでいいです?」
今は水は厳禁。申し訳ないけれど他の人に頼んでくれと思いつつ由紀はそのままジョルノについていき、ジョルノの部屋に入った。
時刻は大体4時。一時間。残り23時間。
(本当に同世代の男の子の部屋に入るのは初めてかも)
人の部屋できょろきょろするのはお行儀が悪いが、つい見てしまう。
ベッドに、イス、机に棚。
シンプルかつ綺麗な部屋。
「よし……これでライターは倒れない。」
いつの間にか、本などで作ったバリケードに、パンに穴をあけてライターを差し込み固定。
由紀はスタンドにより心配はないが、これならお互い大丈夫だろうとほっとする。
「……まず、どこから話そうか」
安定したら、ようやく情報交換だ。
お互いの思っていた事、知りたかった事は山ほどある。
「僕が君の名前を知っているのは、君と会った事があるからだ。」
「会った事が……?」
イタリアに来た事なんてない。
イタリアに来たのは、この二年前のイタリア。
だからといって、この前まで彼と出会った記憶もない。
雰囲気は知っている。けれども、しっかりとした確信がない。
「君が気付かないのも無理はないね。あの時は金髪じゃあなかったから。」
「金髪、じゃあ、ない?」
染めたのか?だとすれば一体元はどんな色だったのか。
「汐華初流乃、といえば思い出せる?花京院由紀」
曖昧な物が、確信へと変わる。
「思い出したのなら次は君の番だ、何故君はあの頃から寸分も変わらずにここにいる?」
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