-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

esame



目を疑うような光景を見て、言葉を失っていると、
部屋にあった鳩時計が3時を指して、大きな音を出す。

そちらに目を向け、またポルポに目線を戻すと、先ほど食いちぎったと思われる指はなくなったわけでもなく、そのままそこにあった。
そう、先ほどの光景が嘘のように。

クラッカーを持っていた手は、現在ライターを持っている。
もう片方の手には依然ワイングラス。
タバコでも吸うのだろうか?

「人が人を選ぶにあたって……一番『大切な』事は何だと思うね?ジョルノ・ジョバァーナ君。
なんだろうねェ〜?最も大切な事と言うのは?」


ジョルノは一瞬考えるそぶりを見せる。
由紀はもし自分に質問が回ってきたらと、質問の内容を考える。

そして、時間もかけず

「『何ができるか』…ですか……?」

と、ジョルノは答えた。

「ほう〜〜、君は何ができるんだね?ジョルノ君」

いきなり一芸披露だなんて、とどうするのかと由紀が思うより先に、ジョルノはポケットから何かを取り出したかと思うとそれらを見せつける。
先ほどの刑務官の、財布と思われるものだ。

「ボディ・チェックを受けたときにこの刑務官から……ちょっと借りてきたんです。
貴方のテストに仕えるかなと思って。
もちろん帰るとき返しますけど……」

そんなことをしていたなんて、全く気付かなかったと由紀は驚いてそれを見る。
いや、由紀が気付いていたら、盗まれた本人にスグばれるだろう。

どうやらそれはポルポにはうけている。
まさか、もうここでジョルノへの試験は終了か、だとすれば由紀はどうするべきかと考える。


「…だがね……、最も大切な事と言うのは他にあるんだ。
それは『信頼』だよ、人が人を選ぶに当たって最も大切なのは『信頼』なんだ。
テストと言うのは君たちの『信頼』をみる事なんだ……この「ライター」の『炎』でなッ!
手に取りたまえ、炎を消さないようにな」

本来食事の受け渡し口と思われる場所が開き、
二つの火のついたライターが、置いてある。


それを、二人は慎重に受け取った。





それは、あの事件から二年たったとある由紀もよく知るバールでの出来事である。

時系列はジョルノと由紀がポルポと出会っていた時。


「嬢ちゃんの資料、こんなもんでいいか?」

「ああ、グラッツェ。」

バーに居るのは、カウンター席にリゾット、プロシュート、ホルマジオの暗殺チームにおける年長の三人。
カウンター越しに資料を手渡すロゼッタ。
合わせて4人。

「に、しても……知れば知るほど奇妙じゃあねーか。あいつは。」

資料にさらっと目を通しプロシュートが言う。

「そんなの調べた私が一番思っている。」

「まさか、人違いじゃあねェ〜よなァ?オメーに限ってそんな事はないと信じてるが」


ホルマジオの問いに、ロゼッタは残念ながら、と答える。
本来ならば開店している店は、閉店の看板が飾られている。


「到底信じられるような内容じゃあないのは確かだ。
俺たちがあの二年前にあったのは14歳の花京院由紀だっつーのに、この資料通りならあいつはあの時6歳。信じろって方が無理だぜ、こんなの。」


「なによりも問題なのは、父親とその周りだ。」

リゾットは資料の関係図のページを出す。
もし、普通の日本人であれば、このような関係図まで洗いざらいわかるわけがなかった。
普通であれば

「両親の花京院典明に、花京院莉緒……親族に空条承太郎。」

「ああ、お察しの通りイタリアでその姿を見かけたら即上の者に連絡。なんて指名手配じみたことされてる三人だ。」

「その上SPW財団とも繋がりがある……って、とんでもねえ奴を俺らは軟禁してたってことかァ〜?冗談きついぜ。…ったく」

表向きは、敵対組織の支援者となっていたが、由紀との繋がりを経て、わかった事があった。
それはありえないと。

だからこそ、上層部の誰かはわからない。もしかすればボス自身かもしれない。
この三人が、組織を覆すなにかを持っているのではないかと。


「……もし、由紀がいまあんたらに力を貸したらどうする?」

「何が言いたい?ロゼッタ」


一通り目を通すべき場所を読み終えたリゾットたちにロゼッタは尋ねる。

「今日、ポルポの元に入団希望者が来てね……、一人は男、もう一人は……」






「さあ!ライターを手に取りたまえッ!」


場所は変わる。
ジョルノと由紀は至極慎重にライターを受け取る。
面会時間ももうない。二人は来た道を戻ろうとする。


「ところで…花京院由紀君。」

「っ、は、はい」


急に呼ばれ驚きながらも、ライターに細心の注意を払って振りむく。


「花京院と聞いて思い出したんだが、花京院典明という名前に心当たりはないかね?」

それは、よく知った名前。
しかし、ライターに注意していたという事も幸いしてか、その名前を聞いて反応は表に出なかった。


「さあ…?日本にはよくある苗字なので、わかりかねます。その方が、なにか?」


父親と答える事も何もなく、彼女は平然と知らないふりをした。
後に、この行動は正しかったと思える。

「ふ〜ん……よくある…ならいい。」


特に怪しまれる事もなく、なのでそのままゲートをくぐる。

「24時間……だよ。明日の3時ここに再び君らが面会に来るのを楽しみにしているよ。」

ゲートが閉じて、そんな声がした。


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