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私にとっては過去の出来事だ | ナノ
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ブチャラティに見送られて二人は足を刑務所に進める。
ポルポという人物がいったいどんな人物か、何故刑務所にいるのか、この組織の構造。
組織に関してはこの程度の疑問だが、由紀には他の疑問がある。
「ジョルノ君、あの」
「聞きたい事はたくさんある。僕も、君も。」
「うん」
「けれど、今はそれを話している場合じゃあない。せめてこの面接が終わってから、その事は話そう。」
今は確かに話すべきではないのかもしれない。
気になっている事は、由紀と名前を知っていた事。
ジョルノと出会った記憶はない。けれど、どこか知っている雰囲気はする。
不思議な感覚。
刑務所の警官にポルポとの面会というと驚くほどすんなりと刑務所内には入る事が出来た。
面会できる牢獄手前で、荷物の預かり、その警官の中の婦警からボディチェックを受ける。
「奥のゲートをくぐると囚人番号N‐28ポルポの監房があります。廊下をまっすぐ歩いていってください。
部屋は強化ガラスによって遮られておりますが会話はできます。ガラスが割れる心配は無用ですが触れることは禁止されています。
何かものをもらうことも禁止されています。面会時間は15分です。貴方がたがゲートをくぐったらあのゲートは閉じますが、何かあった時は叫んでください。」
つらつらと説明がされ、それを黙って聞いていたが、この説明には決定的に不思議な点がある事にジョルノと由紀は気づいた。
このような面会、由紀には実際刑務所で人と面会なんてした事がないからわからないが、ドラマ等を見る限り、通常は面会室なんかで面会する。
なのにこの説明じゃあ
「牢獄で直接面会するんですか?面会室とかではなく?」
疑問に思っていたが、ジョルノはそれを婦警に聞く。
すると
「あんた彼を知らないの?」
と、呆れたような声で返事は返ってきた。
二人とも問題なしと言うことか、件のゲートが開く。
時間もない、だからその疑問は疑問で残しながらゲートを早足にくぐる。
異様な雰囲気なのは、それが日常と切り離れた空間であるからか。
ゲートが閉じる音が響き、部屋の方に向かう。
言われたとおりガラス張りの面。しかし、その部屋の中に人はいない。
(……隠れてるの?)
まさか、隠れるスペースなんてベッドの下くらいなものだ。
そう思いながらジョルノと共に由紀もきょろきょろ部屋のあちこちを見る。
「怪我でもしているのかね?その左腕?」
どこにいるのか、まだ見つからないというのに声がした。
ベッドの方から声がした。
いや、ベッドから声がしたが正しかったか。
「…な……」
唖然、呆然。
ベッドだと思っていたそれをよく見ると手がある、足がある。
隠れてなどはいない。堂々と始めからそこにいた。
部屋に擬態していたかのような、その巨体が。
「その左腕……怪我でもしてるのかね?……
君の右手の指にだけ、かすかにだが、赤くなって握ったような跡が付いている。
鞄を握ったような筋がね……つまり君は右手だけで今まで鞄を持っていたってことだ…その理由は?」
この人物がポルポで100%相違ないだろう。
この観察眼、流石はギャングの幹部とでも言うべきか、見た目も何もかも異様だ。
そう由紀は心の中で思った。
「ええ…まあ。
ええそうです。右手だけで鞄を持っていました……確かに、左腕を怪我しましたから。」
ごまかす必要性も、嘘を通必要性もないと思ったのか、ジョルノはその事実をすんなりと話す。
ブフー等独自の呼吸音をさせながら、ポルポは話を続ける。
「羨ましいね…肉体的に無茶ができて……」
確かに無茶はできない肉体だな、と両人が心の中で思ったであろう。
ポルポは部屋の中の冷蔵庫を開けてワインをとりだす。
「何か飲むかね?ワインでもどうかね、極上のキャンティ・クラシコがある。スカモルッツァチーズとキャビアをクラッカーに乗せて食べるとよくあうぞ」
「何も渡してはならないし、何も貰ってはいけないと言われています。」
ポルポの勧めに、ジョルノはほぼ即答でそれを拒否する。
に、しても刑務所にキャビアや上質ワイン。
刑務所じゃあなくてこれじゃあ高級ホテルかとでも思えてきて由紀は頭が痛くなってくるのと同時に不快感を得る。
あの人たちは、こういう輩の下で……
「そっちの君は、どうかね」
ジョルノと話していたはずのポルポの目線がいつの間にか由紀に向いていた。
ハッと我に帰る。ここでそんな事を考えて何か行動を起こしてはならない。
あくまで今は、この組織に入り込む事が重要なのだから。
「え、えっと、お酒は強くないので。それに、受け取るなと言われてますし」
「ああ、たしか中国人か日本人だったかな?……何も、ね…言ってるだけだよ。
人間とは言ってる事と、やってることはちがうんだなあ〜」
そこが人間の良さであり悪しき所。そう言って取り出したリモコンのボタンを押すと、壁が開く。
隠し棚、のようにありとあらゆるものがそこには置いてある。
プラモデルのような玩具も、食品類も何も。
よく見れば、拳銃のようなものも。
(高級ホテルなんかじゃあない。富豪の倉庫みたいだ)
ゴッホにゴーギャン、有名な絵たちを見て由紀は思う。
憤りを通り越して、呆れまで入ってくる。
しかし、これなら、
この刑務所からわざわざ出る必要性がないということはよくわかった。
「さて、君らの事はブチャラティから聞いておるよ、我々の組織に入りたいんだって?
えーっと、ジョルノ・ジョバァーナ君と花京院由紀君…
どれ…それじゃあ『面接試験』を始めるとするかな……」
「「!!」」
ジョルノと由紀は目を疑った。
自分の指を、食べているその光景に。
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