-->
私にとっては過去の出来事だ | ナノ
Un'apertura
見えて、いる?
ソードが見えている?
メガネのお兄さんはソードを見て、蹴るのをやめ身構えている。
もしかして、お兄さんはスタンド使い?
「周りには見えてねェーってことは……スタンドか、テメーの」
「っ、お兄さんも、スタンド使い?」
「……何者だ」
言葉が通じている……!なんだろう、この安心感は。怖いお兄さんだけれど、ようやくきちんとした会話ができる人が現れた。
「私は花京院由紀っていいます」
「名前なんか聞いてねェ。何の目的があって俺の前に現れたと……」
そんな謎の安心感を感じた時、パトカーのサイレンの音が聞こえた。
そうだった、あんな喧嘩という名のリンチがあったんだ。それも公衆の面前で。
言葉が通じて感動している場合じゃあない。いきなり警察にご厄介になって強制送還なんてシャレにならない。
「チッ、これくらいで呼びやがって……」
「お兄さんッ、乗ってください。逃げますよ」
「乗れって……そいつにか!?」
「お兄さんだってつかまるの嫌ですよね、早く!」
サイレンの音が近づく。ただ走って逃げるよりも確実に早く逃げられる。
何度も言うとお兄さんの方が折れ、ソードに近づく。
しかし、乗るより先にパトカーが目前に見えていた。
「お兄さん、ごめんなさいッ。ソード!fetch!」
「ハァ!?なに……オイちょっと待て!」
「ソード、GO!GO!」
「GO!GO!じゃあねェ―――ッ!!」
お兄さんが乗る前に警察が着いてしまいかねないので、ソードにお兄さんの服の首後ろを噛ませ連れていくよう指示する。
そして、GOの合図とともにお兄さんの叫びは無視して走り出す。
強硬手段だけれど、とりあえず今は逃げることが大切だから仕方ない。
さっそうと街の細い道のほうを走っていく。石レンガの敷き詰められた道、石造りの家の壁を横目に。
障害物には当たることはないので、走り出してしまえばもうつかまることはないと思う。
こういうとき、静ちゃんのような能力があれば落ち着いて逃げられるし、仗助お兄ちゃんみたいな能力だったらさっきの人を治して何もありませんでしたって言えるのに。
とにかく急いで逃げることだけを考えてソードを走らせる。
こんなに細く入り組んだ道だったらパトカーは追ってくることはできない。それに喧嘩ぐらいでそこまで必死になって追いかけては来ないだろう。
「ソード、STOP。」
喧騒から離れかなり静かな場所まで着くと、ソードを止めて降りる。
本当に見たことない風景だ。
いつかのポケ○ンの映画にこんな感じの町が出てきたような。
「ソード、OUT。ここまでくれば大丈夫そうですね、お兄さん。」
ソードに離すように命令すると、お兄さんを下す。
……あれ、なんかぐったりしているような。
「あの、お兄さん?大丈夫ですか?」
「大丈夫だァー?テメーどの口が言ってやがる」
「いひゃい!いひゃいれす!!」
お兄さん怒ってらっしゃる。
口を掴まれていたい、手加減はしてくれてると思うけれど痛い。ソードが私に危害を加えてると思い威嚇しているけれど止める。
確かに、いきなり加えられて全速力で走られて、怒られても仕方なかったかもしれない。
と、言ってもあそこからすぐに逃げるにはこれしかなかったし。
「チッ、で、結局何者だ」
「何者……?えっと、日本の中学生です」
困ったことに身分証明書なんて持ってない。
何者かと言われても、本当にいたって普通の日本の女子中学生。
「組織の者じゃあねーのか。日本……?観光か」
「いや、それが……信じられないかとは思うんですが」
突然ワープした。なんてこと信じられるか
いや、でも相手はスタンド使いみたいだしそういう現象も信じてくれるかもしれない。
と、言うか信じてもらわないといけない。今はこのお兄さんだけが頼りだし。
ここに来るまでの経緯をお兄さんに話してみる。
学校に行こうとしていた時に霧が出て、それでも歩いていたらここについてしまった事。
「なんだそりゃ。嘘言ってるわけ……でもねーな。」
「嘘だったらどれだけいいことか。お兄さんスタンド使いなんですよね、そう言うスタンド使い見たことあったりしませんか?ワープさせるとかそういう感じの」
「そんなの見たことない。大体、イタリアから日本までの射程距離の時点でおかしいだろ。」
やっぱり。だとしたらこれってスタンド使いの仕業じゃあないってこと……?
本当に超常現象なの?
超常現象のなかでケータイが駄目になったりしたのか……
「じゃあ、これはただの不思議現象」
「それかおめーの頭がどうにかしているかってことだ。
クソッ、酷い目に遭った。厄日か今日は……」
「ちょちょちょっと待ってくださいお兄さん!」
帰ろうとするお兄さんの腕をつかむ。
確かに、スタンド使いの仕業とかではないということが分かったけれど、まだ最大の問題が残っている。
「ッ、なんだよ」
「海外に繋がる電話、ありませんか?それか空港」
自分のケータイが壊れている以上、国際電話がどこにあるのか聞かないといけない。
まあ、空港を紹介してもらえば良いんだけれど……
今はお兄さんしか言葉の通じる人が居ない。
「ケータイも持ってねェーのか?」
「いや、圏外になってて……」
「圏外?」
疑いの目を向けられるけれど、本当だから仕方ない。
証拠にケータイを取り出す。
「ほら!一本も電波たってませ……あれ、たってる」
「勘違いじゃねーか。もういいな」
「いや、駄目です」
「――ッ、わざわざ腕をつかむな!あと何だ!?もう俺に用はねェーだろ」
「一人でかわいそうな女の子を置いて行くなんて酷いじゃないですか。せめてかけ終わるまで待っててください」
そう言って、自宅に電話をかける。時差を考えると……向こうは夕方?
私の体感時間は一時間だったけれどここに来るまでにやっぱり12時間くらいはかかっていたかもしれない。
お兄さんの腕をつかんだまま、誰か出るのを待つ。
夕方ならお母さん当たりが出そうだけれど……帰ってきてたら司が出るかな。
「あ、もしもし」
繋がった!良かった、ケータイ全然悪くなってないじゃん
安心して、今の状況を話そう。
『もしもしー?』
話そう、と
安心して、この状況から解放されようとしていた。
この声の主が、お母さんかお父さんであったなら。
『もしもしー、どちらさまですかー』
「………嘘」
出たのは全く知らない声で、つまり間違え電話をしてしまったならまだわかる。
けれど、そう言うわけではない。そして、このことから出てしまう答えはひとつ。
嘘とつぶやき黙る私に電話の声はしつこく声をかける。
その声は私の知っているもの。良く知っている、声。
『由紀?どうしたの?』
『ママ、なんかずっと静かなの』
電話の遠くから聞こえるのは、聞き間違えるわけないお母さんの声。
そして、今電話に出ているのは、 私 。
「―――ッ」
勢いよく電源ボタンを押して通話をやめる。
一体これはどういうことなのか、自宅に電話をしたら私が出た。それも、あれは小さい頃?
「おい、何で切ったんだよ。誰か呼ぶんじゃあ「お兄さん、今って何年ですか?」ハァ?」
自分のした質問は明らかにおかしいものと言うことは理解している。
それでも、確認しなければいけない。
自分がいまどのような状況に立たされているのかを。
「1999年。」
「1999、年……」
自分のケータイをもう一度見てみると、ディスプレイは相変わらず2007という表示をしていた。
「7年前………?」
事態は、私が考えるよりもずっと深刻で、どうしようもなかった。
Prima _ prossimo
ritorno
Segnalibro
(6/71)