-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

序章の終わり



「と、そんなところかな。さて、行こうかソルベ」

「だな。知るべきことはわかった。」


そんな事を考えると、パソコンがシャットダウンして二人が立ち上がる。
どこへ行こうとしているのか。
それは、わかっている。あの公園だ。

「私も行くよ」

「由紀、君はいいんだよ?せっかく未来に帰ってこられたんだし、元々あのチームの因縁は君に関係ないし」

「そんな事言わないで。
もう私はあのチームにかかわったんだから。
それに、私にはねそのイタリアでする事がたくさんあった。」

殺された。
巻き込まれた。
そんなこと全く今思っていない。

助けてもらった。
一緒に暮らした。
それがとても楽しかったし、皆の事が大好きだ。

それに、私にはやるべき事があった。


だから、私が戻るのは必然的な事だ。

玄関にかけてある、予備のコートを羽織る。

あの人たちの恩返し、過去お世話になった人の救出。


「眼鏡返さないといけないし、コートと制服返してもらわなきゃいけないからね!」


準備は万端。

あの人たちが死んだ事で、私は泣かなかった。
だって、アレは、まだ変えようのある過去だからだ。
あの人たちはまだ死んでなんかいない。

「そういえば、それギアッチョのだったねー、それは返さないと」

「キレられるな。『勝手に持ち帰ってんじゃあねーぞボケがッ』とか。」

「「………」」


ソルベの物言いに、私とジェラートが顔を合わせてそしてぽかーんとする。

「な、なんだ?」

「いや、ソルベがギアッチョの真似とか珍しすぎるものを「ソルベ!今の面白い!!初めて見た!なにえっかわいい!てれないでよー!!手かもう一回やってアンコール!」

「……やらない。」

ジェラートのテンションがとてもとても上がるのと同時に反比例してソルベのテンションが下がっていくというかすごく恥ずかしそうだ。
本当に、私珍しいもの見た。

「えーッ!良いのに!またやってもらうからね絶対」

「絶対にやらない。」


「あ、そろそろ行きましょうかー?」


過去を変えるとか、そういう壮大なことする前にこんな調子で良いんだろうか?

いや、いいのかもしれない。妙に湿っぽいのは、なんかいやだから、これくらいが丁度いいのかもしれない。

誰に声をかけることもなく、私は玄関のドアを開けた。





「あら、随分早かったわね。それに、あなたもいるなんて」

公園は、桜が満開でピンクの花びらに交じってベンチに座って本を読んで居る黒の管理者はよく映えた。
まだ午前の公園ということもあり、人は少な居というのがまたこの不思議さを増加させている。

「どうするの?賭けてでも帰る?それともここで安穏と暮らす?」

「帰る。それ以外最初から選択肢なんかないさ。」

「そうね、あなたたちはそう言うと思っていたわ。」

「私も行く。やる事がたくさんあるの。」


私はどうするのか、管理者はそんな疑問を目で問う。
それに、言葉で返す。

勿論、そこに行くと。


「そう。私のミスが引き起こした事だから許可してあげるわ。
それに、面白そうだもの。」

今まで無表情に近かった管理者が微笑む。
そして、私の顎をくいっと上げる。

「精々足掻きなさい、花京院由紀。本来存在していない貴方が過去にどんな影響を及ぼすか、楽しみでしかたないわ。
私の永年の退屈を払せてね。その時は帰らせてあげる。」

本来存在しない。それはそうだ、2007年の花京院由紀はあのイタリアにはいない。
だからこそ

「望むところよ。全力で足掻いてみせる。」

管理者の手を払いのけて挑戦状を叩きつけるように言う。
その様子を、管理者は至極楽しそうに見つめていた。


「っふふ、威勢のいい子は大好きよ。」

管理者は、何か携帯のようなものを取り出す。
タッチパネル?それに何かを入力したと思うと空間がゆがむ。


「これから始まるのは歴史の改竄。大きな流れを変える、川の流れすら変える者に貴方達はなれるかしら?」


管理者の声がする。
歴史の改竄。そんな大層な事など私はしない。
ただ、私は、あの人たちを

目を開けていられない感覚に、思わず目を閉じる。
そして、目を開いた時にはそこは


「………えっ?」


浮遊する感覚。間の前に広がる一面の青。

どうにかして周りを見ようとする。
青以外に見えるのは、屋根。

たしか、あのアジトの屋上などから見える屋根と酷似している事を考えるとここは確かにイタリアだ。
しかし、問題が一つある。


そんな屋上くらいの高さに私はいるということだ。




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