-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

さよなら



その郵便物が届いたのは、スグ次の日のことだった。
ジェラートが殺されて、ソルベと由紀が居なくなった事が全員に知れて

プロシュートとホルマジオは、特に反応しなかった。
メローネは、妙にいらついている様子だった。
イルーゾォもその時は無反応だったが、後で部屋で鏡の割れた音がしたのを覚えている。
ペッシの奴に至っては、泣いていた。

その郵便物には、四角い紙片と額縁のついた絵みてーな物が入っていた。
あんなこともあった。とりあえず、それを保管しておくことにすると、
その数十分後に同じように郵便物は来た。
何をしたいのかわからねえ。紙片も地図のようであることはわかるが、額縁の方は本気でなんなのかわからない。


「……悪趣味すぎんだろ」


メローネの奴は、何か気付いたみたいで呟いていた。
そして、その日の34個目の郵便物でだれもが気付いた。


「歯だ……ッ!!歯と下あごだッ!」


誰が言ったかは覚えていない。
確かにそれは、人間の歯と下あごであった。

ここでようやく35、36個目の郵便物が来た。

その額縁は、目と頭。


額縁をはずして、それを並べなくとも、もうわかっていた。


それが、鋭利な刃物で輪切りにされたソルベだということに。


「う…ッ」


それが分かった瞬間、ペッシはリビングを出て言った。多分、吐きに行った。
正直、オレだって胃液がこみ上げそうだった。

だが、これでソルベは帰ってきた。

死体となって。
35、36個目の郵便物にも紙片はあった。
今までの物を並べると、それは完全な地図となった。


36枚目には、丁寧に赤い印がある、地図に。

そこは歩きでもそう遠くない場所で、道順は地図が無くともわかる。
なにより、そこに何があるのかは直感的に分かった。

まだ、生きているかもしれないという希望があった。

だから


「ギアッチョ、どこに行くッ!?」


リゾットの言葉に答えることもなく走った。
途中でめんどくさくなって、スタンドを使った。


その場所は、何もない空き地だった。

そこに、ポツンとそれは置かれていた。
妙に大きい、ドアのついたコンテナだ。


そのドアには鍵も何にも掛かっていない。
さっさとそれを開けて中に入ろうとすると異常な冷気。
異常な冷気に少し驚いたものの、その奥の物は入り口からでもすぐに分かった。

いつもの緑のコートは着ておらず、水色のワンピース。
近づけば、赤い唇は見る影もなく紫色。
日本人にしては白い肌は、さらに白く。


「寝てんのか?由紀」


その表情はソルベのように恐怖で歪んだものではない。
ただ、静かに
ただ、寝ているだけ。

いつもの恰好と違うのは、あの日出かけるときはその格好で行こうとしていたからか。
その格好についてなにも褒めることもできずに、コイツは死んでいる。

手は、あの時みたいな暖かさはない。
頬にそっと触れる。
あの時みたいにもう涙は流さない。

いつまでも、こんな寒い場所になんか置いておけねぇ。

「寒いだろ、待たせて悪……ッ」

抱えて、さらに気付いた事があった。

「……軽すぎんだろ…、お前。」

それは、お世辞でもなんでもない。
事実だ。まぎれもない。





「ギアッチョ…!」

「おいクソガキ、人を走らせるんじゃあねーよ」


ギアッチョがコンテナから出ると、そこにはリゾットとプロシュート、メローネが居た。
あのギアッチョが出ていってスグに追いかけて来たようだ。

ギアッチョが由紀を抱えているのを見て、全員が悟る。
よりによって、こんな殺し方があるのかと。


「……帰ってきたか」


リゾットは、自分の考えた一番最悪の状況が当たっていた事がわかると、一言そう言った。


「いいや、なんも帰ってきちゃいねェよ」


そう言って、ギアッチョはリゾットに由紀を渡す。
リゾットは戸惑いはしたものの、受け取り、そして気付いた。


その、異常な彼女の軽さに。


「……!!まさか」


「何も帰ってきちゃいねえんだよ。こいつの中身が、なにもな」


「ッ!!」

「オイ、それって」

プロシュートが由紀の腹をワンピース越しに触る。
人としておかしいくらいに、それがへこんでいる事に彼は気づいた。

まるで、肉と骨以外何もないように。


「……!」


思わず言葉を失う。
いままでここに居る全員、何人と人を殺してきた。
だが、ここ二日で三人のあまりの悲惨な死体に、言葉が出ない。


「まァ、問題ねえよ。今すぐ取り返してくる。」

そして、その瞬間この場を異常な冷気が包む。
ギアッチョはいつものようにキレている様子じゃあない。しかし、それは怒りがある一定の上限を超えてしまったからなのかもしれない。

「あんた、どうするつもりだ?由紀をどうやって取り戻す気だ?」

メローネがそれに驚いた様子もなく、静かに問う。
止める様子は今のところない。

「この辺一帯の構成員を殺っていけばそのうち親衛隊が動くだろ。テメーらは何もしなくていい。俺一人でやる。」

「やめろ」

「あんたらに迷惑はかけねェよ、親衛隊をぶっ潰したら流石のボスも出てきざる「いい加減にしろッ!ギアッチョッ!!」

リゾットの怒声が響いた。

「テメーは何だ?女を守るためにチームに入ったのか?
拾った時点でこうなる事が起きてもおかしくねえと覚悟決めて拾って来たんじゃあねえのかッ!
挙句無駄死にか?ふざけた事言ってんじゃあねーぞッ」

「じゃあ、どうしろってんだよッ!こいつの中身はいつまでたっても……」

「こいつらの意思は、必ず引き継ぐ……そして、その時が来たら、今度は全て奪ってやる。
取り戻すために、今は耐えろ」


その場の冷気が収まっていく。
そして、リゾットからまた由紀を受けとると、異常な軽さの彼女を抱え、歩きだす。

涙は、でることがなかった。


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