-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

さよなら



「思ったより時間がかかっちまったな……。」

「本来ならもっとかかっていた。」


どうにも気分は高揚している。
高揚した気分のまま、帰路についている。

好きな奴と出かけるってだけでこんなにテンションあがっているってガキか…オレは。

アジトまでもうそんなに距離はない。
リゾットが俺よりも遅く歩いているために少し後ろに居る。
オレの方が早足になっているのか、そんなことはどうでもいい。

今は待たせねェのに必至だ。
走ったらリゾットに笑われそうだからしねえけど。


(早足というよりも、もうほとんど走っているぞギアッチョ。)

とにかく、あんまり待たせたくねえ。
その為に昼もぬかしてさっさと帰ってきた。

そうこう考えて歩いているうちにようやくアジトが見えてくる。
こうなってくるとリゾットの目なんぞどうでもいい、走る。

走ってドアノブに触れた瞬間、なぜか、嫌な予感がした。

急になんだってンだ。
考えを振り払い、ドアを開ける。

開けて中に入り、人の気配がないことを確認した。

おかしい。


アジトは基本、だれかしらが残っている。
だのに、気配がないっつーのはどういうこった?
だいたい、由紀がいねーわけがない。


「……サプライズパーティじゃあねーんだぞ…?」

リビングに入ったとたん、誰かが驚かしてくるなんて事もなく、いやに静かなアジトが気持ち悪い。
そして、ようやっとソファで寝ていると思われるジェラートを見つける。

「オイ、なに寝てやが……ッ!?」

触れて、ようやく気付く。
寝ているんじゃあない。

どうしてこうなったのかは分からないが、布を飲みこんでいた。
そんなもの飲みこめば、窒息するのは当たり前で、そいつは死んでいた。


おい、

なんだよ

何なんだよこの状況は


「由紀……ッ!おい由紀にソルベ!!どこだ!!」


名前を叫んでも、反応はない。
この調子じゃあ……いや、んなわけがねえ。
由紀は、ソルベは消されちまった可能性が高いが、由紀は元々関係のねえ一般人だ。
どこかで隠れている可能性だってある。


「オレだッ!ギアッチョだ!どこに居るんだッ!!!」
叫んで、洗面所、二階、三階、リゾットの部屋、オレの部屋、もう何だっていい確認できる部屋は確認して回った。


「由紀ッ!由紀、由紀!!どこ行きやがった!」


どこを見ても、どちらも見つかることはない。

今朝、早朝に、眠そうに見送ったあいつがどこにもいない。
昨日、あんなにうれしそうにしていたあいつがどこにもいない。

「クソッ、もう敵ならいねェ!出てこい!」

「……ギアッチョ、これは」

「見りゃわかんだろーがッ!!ジェラートが殺られたんだよッ!」


リビングに戻ってくると、リゾットはジェラートの死体の前に居た。
死んだものは仕方ねえ、だが、生きている可能性があるなら


「つか、あんたも二人を探せまだここに」

「……いや、そこまでにしろ。」

「なにいってやがる、そうか、外ッ!まだ追われて」

「そこまでにしろと言っているッ!ジェラートは殺されて時間が経っている。とっくにあの二人も連れて行かれただろう」

「ッ!?連れて行かれるって、なににだよッ!」

「組織にだ」


組織。
なんで組織が俺らに手を下すんだ?
確かにこのチームは反組織的なところがある。
しかし、手を下されるようなことは今のところしてねーはずだ

「最近ボスの正体を調べる者が居るとロゼッタから聞いていた。……まさか、この二人だったとはな。」

淡々とリゾットが話す。
ボスの正体。それは知ってはならない、組織最大のタブーだ。
知ろうとしたものはすべて殺される。そんなの俺だってよく知っている。

だが、だとしたらおかしい

「この二人が調べていたんなら、由紀は関係ねーだろッ!!あいつはなんだって」

「偶々いたから、居合せたから連れて行かれた。それだけだ。」

「巻き込まれたってことかよッ!ふざけんなッ!!」


あいつが正体を知ろうだなんてしたか?
あいつが正体を調べたか?

何をしたって言うんだ、あいつが


「ここに居る時点で、いつ巻き込まれてもおかしくない。」

「!!」

ここに居る。
それはつまり、ここに連れてきた時点で

リゾットの言葉は、なによりも突き刺さった。

「なんだよ…それって……」

「……そういうことになるな。」

はっきりとは言わなかった。いや、言えなかった。

オレが連れてきた時点で、あいつはいつ死んでもおかしくねえ状況だったなんて。
巻き込んだのは、あいつがこうなった発端はオレなんだって。


「……生きてると、思うか?」

「いや。だが、帰っては来る。」

「そうか」


帰っては来る。
その時、あいつはどんな状況なのか。

リゾットはオレに望みを持たせるようなことなく、意見を述べた。
嘘はなく、言いすぎず。

一人だったら間違えなく、行動を起こしていた。

「なァ、リゾット。」

「なんだ?」

「別に何もするつもりはねェから、手、離せ」

「……すまない」


掴まれた肩は、痛かった。
痛かったはずなのに、肩よりも違うところが痛くて仕方がねえ。


「気持ちワリィ…」


それでも、こんな調子で居られるのはあいつがいなくて、まだ生きているような気がしているからだ。

本当は逃げ切っていて、そのうち帰ってくるような気がしているからだ。




Prima _ prossimo


ritorno 
Segnalibro

(48/71)

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -