-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

さよなら



「うわっ、ソード……どうしたの?」


先ほどまで寝そべっていたソードが、窓の方を見て低く唸った。
何があったのかと窓の方を見るけれど、窓からは前にある家の壁と庭先の植物以外には何もない。

何か虫でもいたのか?……普段見せない反応からすると、イタリアにしかいないのとか?
それはそれでとてもとても嫌だ。絶対見たくない。間違っても見たくない。


「ん?ずいぶんとご機嫌が悪いけど、どうしたの?」


その様子に何か異常を感じたのか、ジェラートが訊く。

「多分、虫か何か見つけたんだと思う。私嫌いだから、その分反応しちゃって。」

「虫か……そう言えば最近ゴ「イヤアアアアア!無理、それ無理ィィィ!!」ッ!?」


私が叫ぶと、玄関の方で何か物音がした。
と、誰か帰って来たんだろうか?もしかして、予想以上に仕事が早く終わったギアッチョかな?


「ギアッチョー?」

虫なんてそんなこと忘れて、今は誰が帰ってきたかの確認だ。
リビングのドアまで駆けて、手をかけ開ける。
早く帰ってくれたのなら、その分お出かけする時間は増える。
それが嬉しくて、ギアッチョだったらなぁ、とドアを開けた。


「開けるなッ!!由紀ッ!!」


普段そんな風に叫ぶことはまずない、ソルベの声は、手遅れで。






その正体を知る者はいない。

その正体を知ろうとする者は多数いる。

その正体を調べる者も多数いる。

だが、その正体は知る事は禁忌である。

禁忌である物ほどその正体を知りたくなるものである。

その正体を知ることは全てを掌握する可能性を持つということである。

その正体を知ることは全ての物に狙われるということである。

その正体を知ることは全力を持って屠られるということである。

だからこそ、その事を知る者はいない。

その正体を調べる者はいない。

その正体を知ろうとする者はいない。

その正体を知った者はもういない。





「オイ、ティッツアーノ……男二人じゃあなかったか?」

「多分最近このチームに出入りしてると噂の女でしょう。誰の女かは知りませんが。」

そこに居たのは、同じヘアバンドをつけた、髪の短い男と物腰柔らかそうな長髪の男だった。

知らない人だ。全く。

だから、この人たちが一体どんな人たちなのか、それはわからない。
けれど、さっきの制止の声。それから、きっと敵なのかもしれないという可能性は感じている。

ただ、ギアッチョじゃあないから、チーム員の誰でもないから、それでそう叫んだ可能性もあるけれど。

でも、わかる。

ソードの攻撃態勢とあの時の唸り声を照らし合わせれば。

この人たちは、敵だ。

幸いソードはまだリビングから出ていない。だからそちらには見えていないだろう。


「勝手に入ってこられたら迷惑なんだけど、お宅ら何?」

「わべっ!」

ドアの前で突っ立っていたら、軽く突き飛ばされてすぐ目の前の壁に当たって変な声が出る。
突き飛ばして出てきたのはジェラートだ。
さっきのソルベの対応からジェラートだってこの人たちが敵だってことは気づいているはずだ。

もし、もしも二人を狙っての事だとしたら私が対応しているうちにキッチンにある裏手から出てしまった方が賢明なはずだ。

だとしたら、何故?


「お、こいつじゃん。あと一人たりねェーけど。」

「こんにちは、別になんでもありませんよ。ちょっと話をしに来ただけです。」

「あっそ、俺も別に話す事なんて何もないさ。」

話がまるでかみ合っていない。
向こうの対応が、こちらを油断させるものだということはよくわかる。
だったら、こちらもそれに乗って油断させるのがベストなのではないかと思うのだけれど、ジェラートは初っ端から敵意むき出しな反応をしている。

「てか、なにあんた。オレの嫌いなタイプなんだけど、諸に。」

「それは奇遇ですね。私もお前のことがたった今会った瞬間から気に入らない」


う、うわぁ……。
敵意むき出しというか向こうもすでに取り繕う気がない。
はじめの話し合いとは一体何だったかとすら思う。

「もうその辺で良いだろ、初めから話し合いなんかッ…」

そう言って髪の短い男が玄関の花瓶をひっつかみ突然ジェラートの方に投げる。

多少不意打ちかもしれないけれど、そこはギャング。
さっと身をかわして、花瓶はそのまますぐ後ろの壁に当たって砕ける。
花は散らばり、水が飛び散る。

「ハァ?何がしたいんだよ。てかリゾットが怒るんだけど……ッ」

「ジェラートッ!危ない!!」

後ろを振り向いたジェラートの目前に居たのは、小さな鮫だった。
ここは海ではない。その前にそんなトビウオのように跳ねるわけもなければ、こんなに小さい鮫がいるわけがない。

とっさに私はソードでジェラートを私の方に突き飛ばす。
間一髪。ソードにそれは喰らいつく。

喰らいつくも、ソードのダメージは私に帰ってくることはない。不幸中の幸いだ。

「ぐ、グラッツェ……なんだよ、今の」

「チッ、はずしたか。」

「なんと、女の方もスタンド使い……そうか、この三人が反逆者。なら、三人始末する必要がある。」


鮫の正体はいったい何なのかわからない。
この男二人のどちらかのスタンドだという事だけがよくわかる。
この鮫のことはわかってももう一方のスタンドがなんなのかはいまだ影も形もわからない状況。

しかし、こちらも、二人の私にとって未知数な戦力がある。

「だがな、すでにここはオレのホームグラウンドだぜッ!!」

「ッ!!ソード!!」

またどこからともなく鮫が飛んでくる。

方向は、花瓶の方。

花瓶を投げた事が、スタンドの攻撃と関係しているのか。
ただ、今はその攻撃を防ぐことに必死だ。



Prima _ prossimo


ritorno 
Segnalibro

(46/71)

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -