-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

consapevolizzarsi



時刻はあっという間に夕食を食べ終わった夜。
どこにあったのか、屋上には双眼鏡やら簡易テーブルと数本のお酒が目に入る。

初めて屋上に上がったけれど、そういった今備え付けたもの以外は何もないような場所だったことはよくわかる。

何よりも、そこから見える夜空は


「綺麗……」


そう、つい声に出して呟いてしまうほどだった。
日本と違って、深い深い青。新月のため月はなく、天の川がかかった星がよく見える。
幻想的な風景。
まだ流れる星は観測できていないけれど、私はただ、星を見に来たわけではない。


流星が降るといわれている方向に背を向けて、フェンスに腕を置いて一体どこを見てるのか。

そんなギアッチョの隣に、私は歩いた。


「………」

「………」


相変わらずの沈黙。
流星群が降るといっていた方ではみんながいて何やら騒がしい。
祭りの喧騒の遠く、というわけではないけれどすこし離れているためにそんな風に感じてしまう。


「……こっちの星は流れねーぜ、由紀」

「うん、知ってる。」


最初に話しかけてくれたのはギアッチョだった。
私もギアッチョも、お互いを見ることはなく、空を見ている。

私は、偶然見つけた夏の大三角形をじっと見る。
じっと見て、話を続けようとした。


「あの、あのね」

「悪かったな。」


話を切り出そうとした時に、ギアッチョが言った言葉は意外だった。
悪かった、謝罪の言葉だ、それは。

何故だろう、謝るのは私の方であるはずなのに。
ギアッチョに嫌な思いをさせていた、私のはずなのに。

ギアッチョの顔は、まだ見れないでいる。


「悪かったって悪いのは私だよ」

「ハァ?テメーのどこに落ち度があった?」

「いや、だって、ギアッチョを不快にさせたのは私で」

「ッ、確かにオメーを見てるといらついたりするけどよ」

やっぱり。
そこで肯定の言葉が出るのなら、悪いのは私だ。

「するけどッ……別に嫌いなわけでも、ねえよ」

「?」

それは、どういう事だろう?
嫌いではないけれど、いらついたりする。
それって、理性とかじゃあなく本能では拒絶しているということか
それならばかなり、いや本当に絶望的なんだけれど。

「つか、常にお前を見ていたり一緒に居ていらついているわけじゃあねェ。今だってそんなことねえし」

「ほ、本当?」

「ここで嘘つく必要ねえだろーがッ、ただあの時は……機嫌が悪かったのも相乗してだな……」


確かに、あの日のギアッチョはどうにも機嫌が悪かったりした。
機嫌が悪くて、私が多分ギアッチョの目に付くような行動をしてしまったんだろう。

だから、だからあんなことに。

「大体、あんとき言ってたことは大体出まかせだッ、もう何言ったか覚えてねえけどな、忘れろッ!」

あの時言われた言葉。
全部全部、胸を刺すような痛みの走る言葉だったけれどあれが出まかせで、本人がいった内容すら忘れたという事実に、なぜか救われるような感覚がした。

本来なら、どう思うべきなんだろう。
散々言っておいて、自分は忘れたとはどういう事かと怒るのか?
けれど、そんな気持ちはない。
その言葉が否定されただけで、なぜか、こんなにも嬉しくて。



「本当に?本当?」


「何回言わせンだよッ、全部…って、おま、なに泣いてッ」


「え、泣いてって…、あ、ホントだ」


どうしてだろう。
昨日、ギアッチョに言われた時はこんなことにならなかったのに。
言われた時は、泣いちゃだめだって、あんなに思ったのに。

どこも痛くないのに、嬉しいというだけで、泣いちゃだめだって思っても涙が止まらなくて。


「なんか、ギアッチョに嫌われてないってわかったら、安心してね、」


「……本当に悪かったな。」

「、もういいよ」


そういって、ギアッチョは指で私の涙をぬぐってくれる。
普段の様子からはうかがえない、とても優しい気遣いを込めて。


ぬぐってもらうと、涙は止まり始める。

よかった、今度はあの時見たいにはならないみたいで。

「詫びつーか、明日の午後から仕事がねーんだが……どこか行かねえか?」

「えっ?」

「観光だ観光ッ、二か月近く居てもここいらからでてねえだろ、お前」

確かに、買い出しとかちょっとしたお散歩程度でしか出ていないからこのあたり以外の場所のことはいまいちわからない。
旅行でもなく、ましてや軟禁に近いのだから、当たり前といえば当たり前なのだけれど。

気を使ってくれたのか、いや、その意図がなんなのかは分からなくて良い。

だって、それは彼の厚意なのだから


「ご一緒させていただきます!……えっとね、」





「ありがとう、すごく楽しみ!」


そう笑っていう由紀。
また、胃のあたりが一瞬むかつく。

ただ、そのむかつきは気分の悪いものじゃあない。

この前、しらねェ奴と話していたときに見たこいつの笑顔。
あの時も同じようにむかついたが、あれは完全に気分の悪いものだった。

この違いは何か、それがようやっとわかった。
こいつの笑顔が、俺に向けられているかそうじゃないか。それでこのむかつきは、気分のいいものか悪いものか決まる。

遠い昔、ガキの頃にこんな感覚は置いてきた。そう思い込んでいた。
一生必要になることはねえって思っていた。


そうか、俺はこいつの事がむかつくわけでもなんでもない。

俺は、こいつの事が好きになっていたのか。



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