-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

bisbetico 2



上り坂ということもあって、あんなに走ったのは間違いだった。

走っているときはなぜか必至で、疲れなんて感じなかったのに


「ハァ……う、」


アジトに付いた瞬間倒れこむように玄関に着いた。
限界。急に走ったから、それと精神的にも。


「……どうしたのさ、由紀」

「おかえりー由紀!あれ?あの暴力的な眼鏡は?」


倒れこんでいたら、声をかけられた。
顔だけ上げると、それがイルーゾォとメローネだということが分かる。

イルーゾォは心配そうに、メローネは玄関の外を見て言う。


「坂……ハァ……から、走ってきた」

「なんでさ」

「おー、なだらかだけどあそこから走ってくるなんてそこのイルーゾォにはできない芸当だぞ」

「黙ってろ。」


二人はしゃがみこんで私を見る。

とりあえず、なんとか立ち上がらないと。

そう思っても、なぜか立ち上がれない。力が入らない。
仕方ない、這ってでも玄関前からは離れよう。
ギアッチョが帰ってきて、いきなりこれは色々とひどすぎる。


「っ、全く……」
「え、…わっ」


ふわっと浮く感覚。
相変わらず力は入らないまま。
すぐ近くには、イルーゾォの顔。


「よっと……リビングのソファまででいいな?」

「え、あ、う……ん」


いまいち状況は理解できないけれど、イルーゾォが所謂お姫様だっこしてくれている。
とりあえず、その親切を素直に受け入れるとして、頷く。

「えっ、イルーゾォそんな力あったの!?」

「これくらいできる……つかお前オレをなんだと思ってやがるメローネッ!」

「もやしっ子」

「……ぷ」

「あ、おい、笑うならここで下ろすぞ?」

「ああ、ごめんなさい!」

多分この下すって言うのは、ぱっと手を離して落下させるの意味だ。
それは痛いから嫌だ。

そのまま運んでもらって、ソファに何とか着く。
着いたら、頑張って座る姿勢を保つ。


「で、なにが「ねえ、私って、見てるだけでイライラする?」ハァ?」


ギアッチョに言われた事を思い出して、訊く。
ギアッチョ以外にそんな思いをさせてる人がいたら、すごく心苦しいから。


「見ていてイライラって……見ていて面白いとは思ってるけどそれはねーよ」

「俺はみてるとムラムラするかなー、由紀体つき良いし。」

「お前もう帰れ、部屋に。急にどんな質問だよそれ」


よかった、二人にも思われていたら、もうどうすればいいかわからなかった。
今はメローネのふざけた回答すらも嬉しい。


「……もしかして、ギアッチョに言われた?それ」

「!!」


ふざけていたかと思ったメローネが突然図星をつく。


「…やっぱり。」

「おい、ギアッチョの奴がそんな事言うか?」

「言うんじゃあない?俺らと違って思春期反抗期真っ盛りだし。」

「……理由になってねえよ」


本当に理由になっていないどころか、もはや意味が分からないところイルーゾォに同意する。


「由紀、なんでギアッチョがそんな事言ったかわかる?」

二人の意味のわからない会話を聞いていたら、メローネに質問を投げかけられる。

「なんで……って、それは、私が」

「由紀のことがうざったいから、由紀の事が嫌いだから?そう思ってる?」


答えさせる必要なかったんじゃあないかと思うくらいに的確に私の思っている事を口にするメローネに、うなづくとやっぱりといったような顔をされる。

「……それ以外理由あんのか?」

イルーゾォも同意見のようで、それを聞いてメローネはため息をつく。

「二人して……。で、由紀はそう言われてどんな気持ちになった?」

どんな気持ち。
勿論、そんな事は直せないし、謝るしかなくて、悲しくて


「ギアッチョに嫌われたと思って、辛くなった。なんか、心が痛くて」

「苦しかったでしょ?」

「うん」


「は?普通逆にむかつかないか?そんなん直しようがないし」

「まあ、あんたならな。」

確かに、イルーゾォの言っている事も尤もだ。
そんな無茶な事言われたら逆に怒りだってわく。

でも、不思議とそんなことはなかった。
ただ、あの時私は辛くて苦しかった。


「大体わかった。大丈夫、ギアッチョは別に由紀の事嫌ってるわけじゃあないよ」

「……?」


なんで?
どう考えても、みるだけでむかつくって相当嫌われているような気がする。

「大丈夫大丈夫、そのうちスグ何ともなくなるから。」

「そう、かな?」

「うん。だからそんな顔してないで。杞憂ってやつだよ。」


多少楽観的過ぎやしないか?
けれど、直しようのない事でこうなると、時間の解決を待つしかないのは確かで

また、一緒に出かけられるくらいになるといいな……。






時刻は深夜。
閑散としたバールはスデに閉店から時間がたっている。


「あんたそれであのお嬢ちゃんにそんな事言ったって馬鹿なのかい?」

「バカって言うんじゃあねーよッ……大体、本当に意味わかんねえのはこっちだ」

空のグラスを握って、ごつごつカウンターテーブルにぶつけまくるギアッチョ。
ロゼッタはあきれ顔。隣の席でそれを見ながら話を続ける。

「あのねぇ……自身で意味のわかんない事ぶつけられたら他人はもっとわけがわかんないんだよ。」

「わかってるぜそんな事ッ!!……あんな顔、させちまったし」

「散々な事をしたのはわかった。ったく、そういう話だったらこんな時間までここにいないでさっさと帰って由紀に謝るもんだろ、普通」


「わかってるッ!!」

わかっている。
わかっているのに、それができない。

これで謝って、謝ったとして由紀がどんな顔をするか。何を思うか。

軽蔑されるか、それとも拒絶されるか。

一時的にそれが解消されたとして、またこんな事があったら

腕を離された時の感覚が、また甦る。
甦って、やめる。


「やっぱり、ここに居たか。」


声の方を見ると、そこに居たのはリゾットだった。
まさか、由紀の話はリゾットにまで…いや、由紀がアジトに帰ったのなら、それは必然だ。
あの様子で帰ったのなら、一緒に居たギアッチョが何かをしたことくらい。


「お疲れ、リゾット。ほら、お迎えだよギアッチョ」

「……あんた、なんで」

「なんでも何もあるか。買い物の荷物を持っているのはお前だろう。リンスがないとメローネの奴が騒いでいてうるさい。ついでに言えば、プロシュートの奴も歯磨き粉がないとうるさい。」

「あ。」

ここでようやく、自分があの時の買い物の袋を持っていた事に気づく。
あの後、なんとなく帰るのも嫌になってそのままここに来てしまったのだ。


「何の買い物袋かと思えば……お使いも満足にできないのかい。」

「うるせえよ」

「とりあえず、さっさと帰んな。リゾット、お嬢ちゃんはどうしてる?」

「もう寝ている。」


その言葉に、なぜかホッとするギアッチョがいた。



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