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私にとっては過去の出来事だ | ナノ
bisbetico
と、やってきたのはいつものスーパー。
イタリアの物価というものはいまいちよくわかっていないけれど、この店は一番安いらしい。
情報チームのロゼッタさんが言うのだから確かだ。
と、いうか、一番安いスーパーが情報チーム調べってなんだろう、この謎の信頼感。下手な電子辞典サイトより信頼感ある。
「で、今日は何を買うんだ?」
「えっとね、リーダーにメモをもらったんだけど」
ギアッチョに言われてポケットから折りたたまれたメモの紙を取り出す。
口頭でも伝えられたけれど、たしかリンスは一番安いのでいいと。
確かいま不足しているのはメモに………
「…………」
balsamo
dentifricio
detergente 3
carta pergamena 4
「………」
何語、日本語でお願いしますイタリア語。
そうか、言葉が通じていたからすごく何も思わなかったけれど、私たち筆談じゃあ何も伝わらないのね。
「何買うんだよ?さっさと言え」
「……あ、これなんだけど。」
言葉の壁を痛感しながら、ギアッチョにメモを渡す。
自分で読めよという目線を受けるけれど、これに関しては帰ってから日本語で手紙でも書いて送ってやろうかと思うくらいに、来るものがあった。
「リンスに歯磨き粉に洗剤とクッキングシート……確かに大した数じゃあねえな。なきゃ困るが。最初の以外」
正直リンスを使うのが、メローネとイルーゾォくらいしか思い浮かばない。
あ、私もか。
だとしたらなきゃ困る。
「えっとね、リーダーがリンスは一番安いのでいいって」
「だろーな。つかいらねェだろ」
「いるよ!なきゃ髪の毛ごわごわするもん」
「……あ、オメーもつかうのか。そういや」
本当に気付いてなかったみたいに言われる。
私も気づくの遅かったけれど、少し傷つくなその言い方は。
まあいいけど。
安いのは贅沢言えないのでそれでいいと思う。
「確かに、見た目のワリにはさらさらしてんだな」
「え?そう」
さらっと髪を撫でるように触られる。
確かに髪の毛はちょっとウェーブがかっている。だからそれでさらっとしているといわれるとなんか嬉しい。
と、いうか今褒められたのが普通にうれしい。
「つか、良い匂いしね〜か?オメー」
「?と、言われてもみんなと同じシャンプーだよ?リンスも」
香水とかそういうのは持ってないから一切していない。
と、言うことはリンスが原因?
ならメローネとかイルーゾォもいい香りするのかな?こんど嗅がせてもらおう。イルーゾォに。
「そういうのじゃあねーよ。なんか」
『ゴホンッ』
後ろから咳ばらいが聞こえた。
そういえば、ここってお店に入ってすぐのところで、そんなに広くないからすごく邪魔だ。
「っ、」
それが聞こえて、ギアッチョが私の手を引いて避ける。
そしてそのまま違うほうへ向けて早歩きする。
心なしか、その顔が赤く見えたのは店の明かりのせいか。
※
「えっと、ギアッチョ、これで買えってリーダーが」
買うものを買い物かごに入れて、レジに並んでいるときにギアッチョにリーダーからもらったお金を渡す。
そう言えば、お金の出し方も色々知らないので、ギアッチョに任せた方がいいと思った。
「アァ?これ多いぞ」
「あまりは小遣いにしていいぞって」
「……ガキのおつかいかよ、あの人は」
だいぶ子供扱いされているのはわかるけれど、私は子供なのでいたしかたない。
ギアッチョはあきれ顔でそれを受け取ると、会計しとくから先に外に出ていろという。
確かに、レジも広くないし邪魔だよね。うん。
そう思って、素直に店内から出る。
日差しはかなり暑くなっている。
イタリアでは流石に緑のコートはスプリングコートでもきついだろうかと思ってきた。
スーパーの前は広場のようになっていて、ベンチなどもある。
ここにある木のどれかも桜だといいなあなんて考えながら、店先に一番近いベンチに向かう。
いろんな人がいる中、黒い髪の男の子を見つける。私と、同じくらいか。
ちょっと離れたベンチで本を読んでいる。
なんとなく、その様子を見ているとその男の子は本をキリのいいところまで読んだのか、
それとも時間が来たのか閉じて立ち上がり、脚を進める。
ふ、とベンチを見ると何かが置いてある。落ちたのかは分からないけれど忘れものか。
スグにそのベンチに駆け寄ると、それはテントウムシのブローチ。
すぐさま手にとってその人に駆け寄る。
「あの、落としましたよ!」
「……?」
……あ、スタンド使いじゃなきゃ言葉通じないんだった。
どうしたらいいんだろう、英語?ここで英語でもいいのか?
でも、落し物ってなんて
「あ、それ僕のですね。ありがとうございます。」
「はい……って、え?」
「驚かせてすいません。久しぶりに日本語を聞いたんでちょっと驚いてしまって。」
日本語だった。
普通の、見ず知らずの人と日本語で話せているこの状況がなんだかとてもうれしく思えた。
四月まで、当たり前であったというのに。
「う、あ、わ、私花京院由紀って言います!!」
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