-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

imposta e muro 3



「…なあに?」

足を止めて、またドアに向き合う。
引き留められるだなんて思っていなかった。

「由紀には、妹がいるんだよね」

……メローネにそれを話した事はあっただろうか?
とはいっても、妹がいる事を話した事がある以上、どうやって知ったのかはこの際いい。
ばれてまずい話でもない。

「いるよ。離れ離れだけど、双子の」

「もし、その妹が、由紀を殺したとしたら、由紀は恨むかい?」

随分と殺伐とした質問だ。
司が、私を殺す。いまいち考えられないシチュエーションだ。自分の片割れに殺されるなんて。

けれど、どんな理由だとしても

「妹がどんな理由で私を殺したとしても、きっと恨まないよ。」

「なんで?」

「あの子に限って、間違った選択をするわけがないから。
きっと、その時は私が間違えちゃったんだと思う。」


そう、きっと、そんな事があったなら。
それは私が間違えた選択をして引き返さないときだ。

そこに善悪は必要ない。
あの子が間違った選択をした事なんて見た事がない。するはずがない。
なら、私がまちがえたんだ。


「…由紀はさ、優しいね。」

「優しい?」

「妹が間違えるはずがない、自分が間違えた。なんて本当にどこまでも信じて」


その声は、冷めていた。
酷く、最初に会話した時よりも、さっき呼びとめた時の声が嘘みたいに。


「現実逃避に付き合ってくれてありがとう。でも、やっぱり駄目だ」


つらつらと、無機物のように感情のない声。


「君は、優しすぎるから、ダメだ。」

そして、完全な拒絶。


しかし、その拒絶に嫌悪の感情はない。
だからと言って、好意的な感情もない。

そう、ただ、ただ無感情をつきとおす声。


「優しいから、この二日は俺にかかわらないで。」


それは、完全な拒絶。本当の手詰まりだった。

優しいから、拒絶。
それは忠告だ。忠告だからこそ、これ以上何かを言うことはできなかった。

この部屋に突入すればまた状況は変わるかもしれない。
けれど、それはできない。

それほどに、このドアは強大な壁で。

きっと、どうしたってこのドアはあく事はない。私にも、ここの人たちにも、あける事なんてできない。

私では、今の彼にしてあげることはなにもないんだ。



「わかった。」


それ以外の言葉は出なかった。
そして、この場から立ち去る事以外はできなかった。

私以外、みんな以外の、誰かが。
誰かが、彼をいつか救ってくれたなら。そんな他力本願且つ自己満足にも似た事を望み、この場を後にした。





「ダメだよ、似ているんだ。」


最初、彼女は俺とよく似ている気がしていた。


「間違えたのは、自分だなんて。」


けれど、違った。
違ったんだ。彼女は自分なんかに似てやいない。

本当に、似ていたのは


「なんで、恨んでくれないんだよ」


なんで、さっさと殺してくれないんだ。







「…………」


やっぱり、だめか。

リーダーはそんな事を言っていた。

朝食はあまりのどを通らなかった。

洗濯ものをやっておいて本当によかったと思う。
なんだか、何もやる気がしない。

誰もいない事をいいことにソファを占領して寝転がる。

「うわっ、すっごい黒いオーラ漂わせてるけどどうしたのさ」

「……日本の六月はじとじとしているらしいぞ」

「嘘、日本人ってこの時期になるとじとじとするの?ソルベ」

「日本人はするわけないだろう」


なんだろう、ようやく日常に戻ってきた気がする。
と、いうかこの二人の夫婦漫才で日常に戻ってきたってどういうことだ私。


「…はぁ」

「どうしたって解決できない事なんてたくさんあるもんだよ。」

ソファの空いているスペ―ス、私の隣にジェラートが座って頭をなでる。

「……そっかぁ、そっか」

「考えるだけ無駄って言うのもあるしね。由紀の場合は考えても無駄」

「無駄、かぁ」

なんか、ジェラートが言うなら、そんなような気がしてくる。
大抵この人、考えお見通しだし。

「優しいから、ダメなんだって。」

「そりゃあ、時として優しさは毒だからね。」

優しさは、毒。
その前に、優しさの意味がわかっていなかったりもする。

けれど、毒というのは合っている。
毒なら、拒絶される意味はわかる。

「でも、毒と薬は表裏一体。ただ、その優しさが合うか合わなかったってだけさ。」

「薬、毒。」

「メローネに由紀の優しさは合わなかったんだよ」


合わない。
合わない薬は毒になる。これも確かだ。


「安心しなよ、二日すればいつも通りだから。」

「どこかの奴は、ドア越しに散々な喧嘩をしても二日すればお互い何ともなかったように過ごしていたからな。」

どこかの奴はきっと、このチームのひとなんだろうというか、大体予想はついた。
スグに予想がつくくらいにはこのチームになじんでいるんだろうか。


「だからもう気にしないでいいって、せっかくの可愛い顔が台無しだぞー?」

「!、あ、ありがとう」


なんやかんやで、すごく慰められてしまった。

確かに、これだけやってダメなら、とことん諦めるしかない。
あの時、もう、立ち去る事以外にできなかったんだから。


「じゃあ、俺らの朝食作ってー、あれだけじゃあ足りそうにないからさー。あと作りたてが良い」

「あ、うん……ってまだ食べてなかったの!?」


時刻は10時30分。
朝食には随分と遅い。

もはやブランチというやつだ。


「遅くまで調べものしてたから早く起きれないんだよー。俺たち主にデスクワークだし」

「追加分はジェラートだけでいい。オレはリゾットが作り置きした奴だけで十分だ。」

「えっ、同じくらい働いてるんだからソルベも食べなよー」

「あー、えっと、とりあえず作るね。」


遅くまで調べもの。
そう言えば、この二人は皆みたいに外に出る仕事は少ない。

主にデスクワークってことは、あまり戦闘向きのスタンドじゃあないのかもしれない。



だとしたら、なんで?
と、いうか、調べものってなんだろう?


そんな事を考えながら、とりあえず冷蔵庫と相談して朝食の追加を作ることにした。



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