-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

imposta e muro



そんなの、今日明日全く食事をとらないだなんてよくない。
よくないどころの問題じゃあない。

メローネは、朝食はきちんと食べろと言っていたのに自分はそれって一体何を考えているのか。


「リーダー、朝食持っていく。」

「……間違っても部屋の中には入れないと思うぞ。
あいつはああなった時、誰一人入れた事がない。」

リーダーが言うなら、それは確実に入れないだろう。

けれど、あんな様子のメローネを放っておくことは、できない。


「俺もあいつが二日間何も口にしないのには思うところがある。
お前が持っていくのなら、メローネの分も作るとしよう。」


「ありがとう、リーダー」

「ただ、何があるかは分からない。何かされたならスグに逃げるようにしてくれ。」


あの感じなら、それは大袈裟な忠告だとはいえない。

それでも、拒絶されても、放っておくことはできない。



この夢は、ひどく殺風景だ。
真っ黒い空間に、亡霊の足がよく見える。
他に何も見えないところ、この空間には二人きりなんだろう。

今までに、他の人物がこの夢に出た事はない。
ずっと、ずっとこの一人の人物と自分だけがいる。

夢はいつ覚めるのか。
夢と理解したら覚めるといっていたのは、嘘だ。

この夢を見たとき、自覚して目が覚めたことなんかない。

いつまでもいつまでも、変わらない一定の声音。
壊れたテープを聞くような感覚。

発せられるのは自分の名前。

責めるわけでもなければただ呼んでいるわけではない。

自分はといえば、救いを求めるわけでも、許しを請うわけでもない。

ただ、それを聞いているだけ。
目線の高さから、跪いているのか。
そうなると、許しでも請うているのか?

夢のことなんか考えていても仕方ない。
この人が、俺を恨んでいるのは、よくわかっている。

よく分かっているから、いっそ

いっそ

いっそ


「殺してくれよ、兄さん」


言葉を発す事は出来たのか。
夢の中だからそれもわからない。

『メローネ』


ああ、やっぱり聞こえていないんだ。
脚は動かない。ただ、突っ立っている状況から何一つ微動だにすることはない。

聞こえていたら、きっと殺してくれるのに。
この人に殺されるなら、諦めがつくというのに。

「メローネ?」

次に聞こえたのは、空間に居ないはずの女の声だった。




メローネの部屋に行くまでに、誰一人と会うことはなかった。
今日も、何人かは朝早く。寧ろ朝日と共に仕事に出かけて行った。

部屋に付くまで、なんて声をかけて朝食を部屋の前に置いておくべきか考えていたのに
いざ部屋の目の前につくと、どうにも緊張してその言葉が吹っ飛んでいる。

なにはともあれ、声をかけない事には始まらない。

「メローネ?」

ドアをノックしながら、メローネの名前を呼ぶ。
これで寝込んでいたりしたならそれはそれで悪い事をしたような気がしている。

最悪、寝込んでいて返事がないのなら会話ができなくてもいい。
一方的に朝食をドアの前に置いておくといえば、食べてくれるだろう。

理由は聞けなくとも、食事をとらないという問題はきっと解決できる。


「………」


返事がない。
やっぱり、寝ているのか。それとも、答えないつもりなのか。


「…何?」

「!!」

返事が返ってきた。
機嫌は悪そうで、調子の悪そうな声だけれど、確かにメローネの声。
この声の距離だと、ドアの前に居る。

「あのね、リーダーに言っといたよ。」

「そ。grazie」


冷たい。心底早く会話を終わらせたいとでもいうような態度。
これ以上の会話は無理なように思える。

「あと、朝食…ドアの前に置いておくから」

「……いらない。」

「朝食食べないとだめってメローネ言ってたじゃん」

「そうだっけ?それでも今はいらない。」


いらないといわれても、食べるかもしれない。
だから置いておく事にしよう。

メローネの態度は、本当に悪い。
いつも勝手に抱きついてきたりそこらじゅう触ってきたり。
でもその中で私を警戒して、殺そうとしたり。
そう言うの事のどれにも属さない悪さ。

ぴりぴりしている。ぴりぴりとしていて、あからさまに拒絶の色が見える。


「……あとね」


「まだあるの?ねえ、気にしないでっていったよな?」

「…早く良くなってね。リーダーも、私も心配してるから。」


一番伝えたかった言葉。
どんな理由があるかわからない。
どうしてこんな風になっているかわからない。
こんな言葉でどうにもならない状態なのはわかっている。

でも、言わずには居られなかった。

きっと、メローネは私の事を嫌っている。心の底で辟易しているのはよくわかっている。
けれど、私は別にメローネの事を嫌ってもいない。あんなことされても。
だからいつものように、表面上も取り繕えないくらい辛いのが治ってほしい。


「……」

返事は、ない。
けれどいい。聞こえていたなら。

聞こえて、少しでも届いたのなら。


「じゃあね」


あとはもう、こういう時の体調の回復の仕方は人それぞれだ。
きっと、いや絶対私は邪魔だ。

そう、踵を返した時


「待って」



Prima _ prossimo


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