-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

intenzione



「今回の任務…とどめを刺せなかったんだ…。」

とどめを刺せなかった、つまり殺すことができなかったということか。
忘れそうになってしまうが、この人たちは暗殺を生業とする。ギャングの中でも特に危ない管轄だ。
一週間程度しか関わっていないけれど、任務から帰ってきたこの人たちはいつも綺麗だ。
さすがプロフェッショナルの上スタンド使いと言ったところだと思う。
まるで漫画の世界みたいだ、なんて何度考えたか。

と、それはいい。


「とどめを……って、それでよく無事に完遂してきたね」


「今回も兄貴がとどめを刺してくれたから……」


と言ってペッシはまたうなだれる。
頭まで抱えている。ああ、それで殴られたりしたのか。鉄拳制裁。

だがそれも仕方ないような気がする。
そういう職業柄なら人にとどめを、
それもターゲットにとどめを刺せないだなんて致命的だ。

それは、兄貴が怒る理由もわかる。


「途中までは何とかなるんだ、でも、いざとどめをさすって時にどうしても……」


そこまで言ってペッシは言葉を止めてハッとする。


「ご、ごめん。こんな話して」


彼なりに私に配慮してくれたんだろう。
それはとてもありがたいとして。

「別にいいよ、大丈夫。」

そういう系統の話がだめならば、まずここに居ることもないのだから大丈夫だといっておこう。


「大丈夫……本当に、由紀はすごいんだな」

「すごくなんかないよ」

やっぱりどこか普通の女の子と同じように思われている節があるんだろう。
それは確かに、目の前で戦闘をしたことがないし、目の前で人を殺したりしていないからというのがある。


「私は、自己防衛で戦っただけで……」


そう、自己防衛。
だからこそ、仕事でそれをやるここの人たちは私よりも覚悟もその精神も数段上なのは確かだ。
一体、それがどのような経緯で、どうしてかは私の知るところでもないし聞くつもりもないけれど。

「殺さないと生きていけないことってあるんだよ」





「………なにしてんだ、テメーら」


アジトに入って早々に目にしたものは、リビングのドアにへばりっついてなにか聞き耳を立てているソルベとジェラートだった。
つか、本当に何してやがるこいつら


「うわっ、ギアッチョ……って、しー!今大事なところなんだから煩くするならもう一回外にでも出て行ってくれ」


「ハァ!?大体なに聞いてんだよテメーらは『殺さないと生きていけないことってあるんだよ』


その声は、由紀のものだ。
にしたって一体なんの話をしているんだ、今の言葉は……


「ほら、大事な場面ってことはわかったろ?静かにしているなら居てもいいけど」





「殺さないと生きていけない……って、もしかして由紀は……人を」


語尾が消え入る。
人を殺したことがあるのか?
そう聞きたいんだろうということは容易に想像がつく。


「あるよ。確か、7歳くらいのことだったと思う。」


そう言うと、信じられないといった顔をペッシはしていた。
年齢、国籍、性別、それとも全て、どの理由かは分からない。


「その時の話……聞いてもいいかい?」


それは、好奇心なのか。
参考にしたいのか?

質問の意図がどれであれ


「小学校の、帰り道でね」


私の両親、知り合いたちは、過去に少々人に恨みを買うことをした。
それが善か悪かということはわからない。なぜなら両親たちから見ればそれは善行であり、向こうからみれば悪行であった可能性もあるからだ。

別にそれだからと言ってその人たちに偏見をもった事はない。
むしろ、大好きだった。それは私のことを好きでいてくれるから。

「もし、怖いことがあったらスタンドを使っていいんだよ」

大好きなお父さんは、私と妹にいつもそう言っていた。
怖い事、が何かよくわからなかったけれど頷いていたのをよく覚えている。

けれど、どんな怖いことがあっても、きっと誰かが助けてくれる。
そんな甘い考えが、子供だから仕方ないのだけれどあった。


そして、その怖い事が一体何かよく知ることになったのは寒い日の夕方、小学校の帰り道。

誰もいない道で、知らない人が急に私の腕を取り押さえて、妹に銃口を向けて

生まれて初めて殺されるんだって思った。
生まれて初めて殺気をあてられた。

その行動は、過去のしがらみから損をした人間の憂さ晴らし。
私の両親に挑むのは只殺されるだけと踏んで、私たち子供を狙った。

殺されるんだって思っても、スタンドを動かすことはできなかった。
殺されたくない、絶対に死にたくなんかないって思っても、この人を殺すつもりにすらなれなかった。

それは当たり前だ、只の子供なんだから。
常に死と隣り合わせにあるわけでもない。帰れば待っていてくれる人がいて、愛してくれる人がいて、そんな平和ボケした国に暮らしているのだから。

妹も、私も、どうしていいかわからず泣いていたのを覚えている。
泣き声に、その男は大層機嫌よく笑っていたのを覚えている。


私は死にたくなかった、妹だって殺されてほしくなかった。


さらに怯えさせるために妹に向けてはなった銃弾。
威嚇射撃だからそれは妹の頬を掠めて、コンクリートを抉る音がした。


その音で、私の何かは切れた。




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