-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

Cucinando



「まあつまり君の朝食はないんだ!」

「堂々と言わなくてももう察しとるわボケがッ!」

ギアッチョがメローネに見事なひじ打ちを食らわせる。
自分の父親を彷彿として、由紀は拍手すらしたくなるも現状がだいぶひどいことを思い出してやめる。
朝食がないとなるとどうするか。朝食くらい我慢すべきか。

「だからと言って由紀がこのまま朝食を抜くことはとても良くない…」

「いや、ないなら別にこのまま我慢しようかなと……」

「それはッ、良くないんだッ!!」

「あ、うん」


誰のせいかといえば完全にメローネのせいだというのに、
朝食を抜くという選択はしてはいけないと迫る。


「………」


その様子にギアッチョも怪訝そうな顔をしている。
なにいってんだ、こいつ。と言いたそうに。と、いうよりもはや言うのをあきらめたように。

「だとしても、何を食べれば?」


「朝食がなければ作ればいいじゃないか!」


どこぞの王女みたいなことを言い出すメローネに、
ますます由紀もギアッチョも訳が分からなくなる。
大体、由紀には料理は禁止令が出ている。手伝いすら禁止されていた。


「オレの監修の元、朝食を作ってよ!」

「え、うん」

「なにOK出してんだよ!?」

流れに流されついOKを出してしまう。
別に悪い誘いというわけでもない。自分の食べるものを自分で作るくらい。
それに、朝食なら軽食だ。対して手間もない。

メローネが監修したとなれば、おしかりを受けることもないだろう。


だとしても、なんで?

という疑問が浮かぶ。


「そうと決まったら早くやろう!さあさあキッチンに立って」

どこから取り出したのか、ピンクのフリル付きエプロンを渡してメローネが言う。
とりあえず、それを着るのは断っておこう。そう思い由紀は丁重に断りつつもキッチンに向かう。

「オイ、マジでやんのか?」


「ギアッチョは気にしなくていい。つか、あんたが料理に関わると、いや、作業を見ているだけで不味くなる。」

「どーいう意味だテメーッ!!」

キッチンに向かおうとしたギアッチョをメローネが止めた。
手伝ったならまだしも、作業を見られるだけで不味くなるとはこれまたいかに。
過去にどんなことをやらかしたというのか、消し炭にでもしたのか?
そんな多くの料理失敗例を考えていると、


「チッ、勝手にしろ。由紀、また変なことされたら容赦なく殺っとけ」


そんな言葉を言ってリビングから出て行ってしまった。
じゃあねー、なんてメローネは手を振ってそれを見ていた。

さて、作るとしたら軽食。
とりあえず卵と何らかの野菜さえあればスクランブルエッグという形で朝食に向いたものができるだろう。
そう思い由紀はメローネに冷蔵庫を開けていいかと許可を取ってからあける。
どの家庭の冷蔵庫にも卵はさすがに入っているだろうと思っていた通り、冷蔵庫を開けてすぐに卵は見つかった。


野菜はと言えば、トマトが見つかったのでそれを切って
卵とともに炒めてパンと一緒に食べればいいだろうと考えた。


「えぇー、これ着てくれないのかァ?由紀」

「着ない」


即答ともいう速さで由紀はメローネの言葉を否定する。拒否する。
メローネは先ほどのピンクのフリル付きエプロンをひらひらさせて持っている。

「えっと、勝手に食材使っちゃっていいのかな?」

「トマトと卵くらい誰も怒んないって。そんなことより」

「しつこい」

許可が出次第、由紀はトマトを水で洗う。
水洗いしたら拭いて包丁、は見当たらないので見つけたペティナイフを使うことにする。
柄まで鉄でできていて、随分と言い切れ味に指を切らないようにと用心する。


「なあ、由紀」


「…それは着「君は、何者なんだ?」


先ほどとは違い、ふざけた声ではない。
至極真面目な声。


「……っ」

後ろから近づき肩に手をかけ、距離が近い。
振り向いたらすぐそこに顔があるであろう距離。

そして何より、由紀をすぐにでも殺せるよう、ナイフを突きつけている。
が、それは由紀の角度からは見えない。しかし嫌な雰囲気は十分に感じ取れている。

「もう一度聞く、君は何者なんだ?」


「私は、ただの」


「日本の中学生?あんなに治安のいい国で、
ただの中学生がこんなことに巻き込まれて平常心保ってるなんて随分おかしいぜ?
……ギアッチョをどうたぶらかしたかはこの際良い。
お前は危害を加えるものか?違うのか?納得のいく答えを聞かせてくれ」


答えようによっては殺される。
言いようのない感覚に委縮してしまいそうになる。
スタンドを出していて、スタンドが戦闘態勢に入って居ようと、この感覚はやまない。


「私は……ギアッチョに助けられた。ここの人たちに助けられた」


出た声は、不思議と震えていなかった。
はっきりとした、声だった。


「だから、その分、役に立ちたいと思ってる。私にできることなら。」

言いたいことは言った。これで殺されるとしてもいい。
由紀は覚悟を決めて、審判を待つ。

「……ねえ、本当に君は何者なんだい?」

先ほどとは違い、殺意の薄れた雰囲気。
何者なのか、それを話したところでギアッチョのように納得する確証なんてない。
それ故に由紀はその問いに

「ただの、日本の中学生。身寄りのない」

としか答えることができなかった。

「いいや、違う…由紀、君はオレに「…なにしてんだよ、メローネ」


メローネが何か言いかけた時、現れたのはイルーゾォだった。
先ほど退避していたはずだが、この様子を今まで見ていたのか?
真実のほどはわからない。




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