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私にとっては過去の出来事だ | ナノ
Facendo compere
「由紀の衣類を調達して来い。」
「……リゾット、それって」
衣類、そういえば元々学校に行く途中にこんな目に遭った私には今着ているもの以外何もない。その点においては来るときに掏られたということでごまかしている。
「急だから仕方ない。それに、流石に隠さないとはいえアジトに暮らしていることまで知られても困るからな。由紀と共に行って拝借して来い。」
拝借、言い方はそれとしてつまりは盗ってこいってことだよね。
大体こんな時間に店が開いているとも思えないし。
「それって女が行くような店に入れってことだよな!それも女と!!」
問題はそっちだろうか?いや、ギャング的に、そっちのが……問題…?
わけがわからなくなってきた。価値観の相違というのは本当に。
「それくらいで何興奮してやがる……本当にイタリアーノか?オメー」
突っ込むべき点はそこなんだ!スリとかおおいから取るという点に関しては罪悪感なし!ってことなのかな!?
あと、閉店した店に勝手に入るのとか。
「良いから行って来い。当分なんとかなれば後は俺が作る。」
「わかったよ……行けば、って作る!?」
「リーダー、服飾もできるんだ……」
ギャングチームの、リーダー……だよね?
女子力53万のギャングチームの…リーダー……いっや、深くは追求しちゃいけないんだ、きっと。
「……とりあえず、さっさと行って帰ってくる。…ついてこい、由紀」
「あ、はい!」
いまリーダーの女子力はいい。関係のないことだ。多分。
とりあえず今は言われたとおりにイルーゾォについて行こう。
それにしても、なんでイルーゾォに頼んだんだろう?閉まったお店に簡単に出入りできるのかな?
能力が関係して入ると思うなどと思案を巡らせながらイルーゾォについて階段を下りて玄関に向かっていく。
「……あれ…?」
違和感。階段を降りたところから謎の違和感があった。
イルーゾォについていき、その話が終わった時にギアッチョがまた抗議をしていたのに、その声が一切聞こえなくなった。
ギアッチョが諦めたのか、いや、こんなに突然静かになるわけがない。
そのうえ、ただ静かになったわけではない。
この場に、まるでイルーゾォと私以外は誰も居なくなったかのような感覚がある。
「い、イルーゾォ、ここ、どこ?」
「どこもなにも、まだ家の中だろ。」
そっけない回答。いや、そうではなくて、家の中ということは誰にだってわかる。問題にしているのは、この雰囲気、何かがおかしいということだ。
ちらりと、追いかけてくるソードを見る。いつもの大きなサイズで私の後についてきている。これはイルーゾォに見えているはずだ。なのに、これから外に出るというのに何も言わない。
もしかして、能力と関係しているのか?
だとしたら、一体どんな能力なんだろう?
自分に悪意のないものならば、それがいったい何なのか単なる好奇心で知りたくなってしまう。
「ドアを開ける。一回外は歩いたんだよな、プロシュートと」
「あ、うん。」
「なら、この先にあるバール紹介されたよな。そこの裏手に、これから一人で行ってからスタンドをその時みたいに小さくして待ってろ」
バール、確かに今日歩いていて兄貴にチーム御用達のバールと紹介された場所がある。多分そこなんだろう。
でも一人でって、どういう……?
「裏手に行ったらその場で待っていればいい。」
「わかったけど、なん……アレ?」
どういうことなのか説明をもらおうとしたら、イルーゾォがいない。
いないのにドアが開いた。きっとイルーゾォが開けたに違いないけれど、その姿はどこにもない。
何が起きているのかはいまだにわからないけれど、先ほど言われたとおりにドアから出る。少ししてドアが閉まったのを確認して先に進む。歩いて気付くのは、外なのにここまで人や動物がいないということ。いつか聞いた夢の世界に現れるスタンドのようなものなんだろうか?世界を作るスタンド?現実世界とのリンクがあるのも確かだ。
思案を巡らせながらバールの道を歩いていく。そんなにここから遠いところでもなければ迷うような場所にいあるわけでもない。兄貴の説明では、組織の経営するバール、らしい。私もそのうちあいさつしに行くことになると思うといわれていた。組織側ではあるけれど、そこの主人はどうやらこちらのチームに肩入れしてくれているらしい。
そんな風に言われたことを回想しつつ、イルーゾォの能力が何なのか予想して路を歩いて行くと、さらなる違和感に気付いた。それに気付いたのは、読めもしない店の看板が、視界の隅にうつったとき。
イタリア語なんか読めない。読めないけれどそれが正常な文字か、鏡文字かくらいの違いはわかる。
「もしかして、これ……」
これが、イルーゾォの能力を紐解くカギ?
きっとそうに違いない。だって流石にここ一帯の看板は鏡文字、なんてことはあり得ない。昼に違和感を感じなかったのだから。
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