-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

citta



「………おい、あいつはどこ行った?」


プロシュートと由紀が出かけてどれくらいたったのか。
昨晩は寝るのが遅かったために、随分と遅い起床をしたギアッチョがその日は一日中このアジトに居たはずのソルベとジェラートに何があったのか尋ねていた。
と、言うより詰め寄っていた。

何より、絶対に外に出るなとくぎを刺されているはずの由紀がかってにこのアジトを出るわけもなく、下手をすれば何か嫌な事に巻き込まれた、連れ去られたという可能性も無きにしも非ずだからだ。


「あー、由紀のこと?」

「それ以外あるわけねェーだろッ、どこに行った?」

「外……。」


ジェラートが、その問いに対してバツが悪そうに答える。
その態度から、ギアッチョはすぐに何かに加担したのだと理解する。


「正直に言え、あいつをどうした」


「そ、それがー「プロシュートが街に連れだした。」そうそう!観光中ってやつ?」


「観光中だァッ!?」


昨日の話、リゾットが由紀に外に出るなと言う話はなんやかんやで全員が聞いていたはずだ。いや、聞いていた。

それなのに観光とはどういう了見か。


わけがわからない。わけがわからないを通りこす。


「あのクソジジイ……つか、なんでテメーら止めねえんだよッ」


「プロシュートと由紀がいつまでも玄関近くで、出るかでないかうるさかったから…」

「メガネを渡して外に出した」

「俺のメガネが一つねぇと思ったらテメーらの仕業か…つか、外に出してんじゃあねーよッ!」

うるさかったらプロシュートを叩いて、由紀を引き留めるのが普通じゃないのか。
うるさいと言う理由で二人とも追い出すとは、こいつらの考えが全く理解できないと、ギアッチョは苛立ち、その怒りから近くの壁を思い切り殴る。

「過保護だなァ…ギアッチョ」

そんなギアッチョを見てジェラートが呟くと、ギアッチョはギロっとそちらを睨む。


外に行ったのは確かだとして、結局詳しい場所はわからない。
それに、一人で出て行ったわけじゃあなければまず帰ってこないことはないし、事件に巻き込まれることはあまり無いだろう。

だからといって、良かったと喜ぶわけでもないが。



『あの食い方はねェだろ……』

『え?変、だった?』


ぴりぴりした空気の中、件の二人の声が玄関からする。
その声を聞くなり、ギアッチョは玄関に向かう。


「おい、テメーら……」


「あ、ギアッチョおはよう!」


「おはようじゃあねェ……ジジイ、オメー昨日の話聞いてなかったわけじゃあねーだろッ!」


怒るギアッチョに、やっぱりこうなるよねと由紀は内心そう思った。
プロシュートはプロシュートでそれがどうした、と全く悪びれない態度でそれを聞いていた。


「生きてる人間をずっと閉じ込めて隠す方が無理っつーことだ。リゾットにはオレが説明する。」

そう言って、プロシュートはギアッチョの横を通り抜けて行った。

「待てッ、話しは」

「兄貴ー!アイスありがとね!!」

「……アイスって、何しに行ってたんだよ」


由紀に言葉を遮られて、プロシュートには言及する前に部屋に帰られて、ギアッチョは問う標的を変えた。


「スタンドの話をして、店の裏事情聞いて、広場でアイス食べた?」「アイスってガキかッ!?」


「14は充分にガキだよ!チェリー美味しかったなぁ……」


開き直りつつ、その食べた物を思い出してニヤニヤしている由紀をみて、ギアッチョは怒るのを通り越して、呆れていた。


「おかえり由紀、その様子だと楽しかったみたいだね」

「そのメガネはギアッチョのだ、返しておけ。」

「この街の女の人の視線が痛かったけど……って、これギアッチョのだったの!?勝手に借りてごめん!」


慌てて由紀はメガネをはずしてギアッチョに返す。
その様子でさらに怒る気力と言うのを削がれる。馬鹿馬鹿しくなってきたのだ、怒るだけ。


「つか、これかけてなんともねーのかよ」

「なんで?」

「持ってるメガネの中じゃあ度は弱いが、度は入ってんだからな?」


「あー、それなら私ちょっと目が悪いから寧ろ見やすかったよ。」


最近視力下がってきてメガネを買うか迷ってた等と付け足す。


「だったら、貸してやる。」


「はい?」


返されたメガネを、由紀に差し出していう。「見やすかったなら貸してやる。また外に出るときにでもつけてろ。」


「またって、リーダーに怒られてもう外出不可な気がするのですが……」

「どうせ、外出可能になる。」


諦め、だろうか。どうせといういみが由紀にはよくわからなかったが、その言葉に何かあきらめのようなものを感じた。




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