-->私にとっては過去の出来事だ | ナノ

citta



半ば無理矢理、いや完全に無理矢理外に出てしまったわけで。

「まずはそいつについてだ。何ができる?」

あの家を少々離れ、にぎやかな通りに出ると聞かれる。
表通りだけあって、ここで何か話しながら歩くのは特に変な事は無く、下手に話を聞いてくるような人がいればわかりやすく、隣あって並んでいない限りは会話の内容は特定されにくく、仮にスタンド使いから見ても犬の散歩のように見えるだろう。
まあ、もし盗聴器なんかが付けられていたら無意味だけれど、そんなことされていたらはじめから詰みだから考えない事にする。

「シンプルなスタンドで、噛んだり、引掻いたり。乗って移動できたり……あとは、教育というか、訓練次第で能力の幅が広くなるというか」


「教育……?」

教育という言葉に顰めている。
何かおかしいことを言っただろうか?確かに、周りのスタンドと比べて自分のスタンドは少々特殊な気はしている。

「いや、教育っつーとどうしてもアイツのスタンドがな……ま、今のは気にすんな。」


お茶を濁した発言。それはきっと、勝手に人のスタンドの事を話してはいけないという事からか。私もそれ以上は詮索しない事にする。気にならないのかと言われれば嘘になるけれど。


「あ、あと他のスタンドと違ってダメージが返ってこないっていうのもあるよ。」

「ダメージが返ってこねェ…って、そいつは自動追跡遠隔型か?」

付いてくる中型犬サイズのソードをチラリと見て訊く。
自動追跡型と聞かれるとまた違う。ダメージが来ないのは確かだけれど、ソードとは離れて戦った事が無い。自動追跡型は融通の利かないスタンドみたいなことを言われていたけれど、そんなこともない。
だから、近距離スピード型がこのスタンドのタイプである。


「多分、違う。離れて戦った事が無いから…分からないけれど。」

「分からねえ、な。まだ伸び代があるってことか。」


何故だろう、そう言った彼は妙に嬉しそうだった。

鍛えがいがあるとかそう思われたのか、世話やきなところがあるのかな?

スタンドについて、自分の戦闘経験について、どういうスタンドを見たか、大体の事を話した。
日本の事で、名前や詳細はぼかしてあるし、別に知られたからと言って何か悪いことが起きるとも思えなかったからだ。

大体、過去だし。


能力とかの話の合間、この街の裏路地とか店の情報が入る。
情報と言うのは、もちろんのことながらただの旅行観光のそう言う物ではなく、かなり物騒な話が主だった。
と、言うよりそう言う物以外になかった。

確かにここで観光情報を話されたらそれはそれで本当にどうかと思うけど。

この人が、突然の観光案内……顔面偏差値は高いけれど、明らかホストやらそう言う系統の恰好だし、騙されてる感が出てる気がする。

うん、嫌だ。

「今、何考えた?」

「いや、別に、何も」

石畳の道をどれくらい歩いたか、きっとそこまでは歩いていないはずだけれど、全く見慣れない土地、それも国外ともなると少しの距離でも迷いそうで、覚えるのに必死になって長い距離を歩いたような気分になる。

これから、こうやって出歩く機会がもうあるのかすらわからないけれど。


大通りだったであろう道から、開けた場所に辿り着く。見たところ、広場。

噴水があって、建物に囲まれている広場。


「この辺りまでの道は覚えたな?覚えねーと日常生活すらままならないぜ?」

「いや、その前に私外出許可もう出ない気がするんですが…」

確かに、ここで暮らすにあたって家付近の地理は理解していなければいけないだろう。だけれど、今の私は特殊ケースだ。出るなと言われている。


「まだ言ってんのか、ンな事を。」


……この口振りからして、やっぱり上司部下関係とかそう言うのってないのかな。
どうしてだろう、リーダーにお疲れさまと心の底から言いたい。

これ以上この話題は無駄と判断して広場を見る。
そして、その視界の端で一つ目に入ったものがあった。


「アイス!」


アイスを売っている出店のようなものなんて初めて見た。
その珍しさとアイスと言う事に声を出して反応してしまう。

大繁盛、大行列、なんてことはないけれど、子供や女の人が店の周りに居る。
広場で食べ歩き、噴水に腰掛けて食べてたりする人がちらほら見える。


「はしゃいでんじゃあねェよ、ガキか……って、充分にガキだったな。」


多少呆れながら、納得しながら言われるけれど、14歳は充分に子供だと思っている。だからそれに対する反論は無い。


ワゴン近くまで行くと、色とりどりのアイスがケース内に見える。
アメリカほどにカラフルじゃないのがまたいい。
何よりその中のひとつ、果物が埋まっているもの。あれはどう見ても……


「……あ。」


お金は持ってるんだからと財布を開いて行動が止まる。
5000円札と小銭が少々。


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