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楽園探しの旅 | ナノ
プロローグ
幼い頃に、どうしても人とかかわりたくない時期があった。
他人と自分の違いがとても恐ろしい、そんな時期が。
「俺は、大切な人を殺めました。」
美しく、優しい……ただ一人の愛した女性。
話は過去に遡る。
楽園信仰がこの教会の信仰で、そんなところに俺は良く行っていた。
それはただ単に親からの押し付けであり、俺としては幼い頃から教会に行き、同じ年の人間と関わるのは嫌だった。
「イルーゾォ君!遊ぼうよ!」
「…………俺はいい」
「だめだよ○○、この子絶対に断るんだから」
子供として、俺がおかしい奴だったことは自覚していた。
教会の奴等だって、俺がおかしいと思っていたはずだ。
ただ、人と合わせることがわからなかったんだ。
同じように笑う
同じように怒る
同じように泣く
そういう事が出来なかったんだ。
だから教会に来ても子供からは避けられた。
それがいっそう俺には怖く思えた。
他人の認識している世界と自分の認識している世界の違い、自分の感じている世界と他人の感じている世界。
『違い』は耐え難い恐怖だった。
それが、いつか『拒絶』に繋がるから。
いっそ空気になってしまいたい。
居なかった事にされたい。
俺を見て、大人たちはみんな苦笑した。
居場所は、ないようなもんだった。
楽園に行けば何でもかなうなら、自分の存在をかき消してくれ、と願いたかった。
そんな時、教会に通うことになった子供が増えた。
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