-->楽園探しの旅 | ナノ
プロローグ



ただの妹のはずだった。

両親を失ってから、守っていかなければならない大切な存在のはずだった。


だが、その考えはどんどんと変わってしまうことになってしまう。



「さあ、楽園に帰りましょう?」


泣きながら微笑む彼女の手には、ナイフが握られていた。




物語は遠い過去までさかのぼる。



「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」


朝、エミは大きな声で兄を呼ぶ。


「どうした、エミ。朝からうるせぇぞ」


「ごめんなさい、今日の朝ごはんは私が作ったから食べてもらいたくて」

キッチンのほうからは焦げくさい香りがしている。

エミの指もよく見たら絆創膏だらけ。

プロシュートはとてつもなく嫌な予感がしながらも、エミに手を引かれ階段を下りて行った。



「……努力は認めてやる。」


「すっごいがんばったから絶対においしいよ!!」


プロシュートは溜息混じりに言うが、エミはそれを完全に褒め言葉として受け取っている。
目の前には、どう見ても焦げた料理の数々。野菜も不揃いに切れている。


「結構自信作なんだー!おいしい…最高においしいってやつだよ!ほら、あーん」

エミはフォークで野菜を刺し、プロシュートの口まで運ぶ。

観念して、口をあけそれを一口で食べる。

「………」

「お兄ちゃん、おいしいでしょ?」


「お前、塩と砂糖間違えただろ」


「え!?嘘、そんな初歩的な間違いしないよー」


そう言ってエミは自分の作った料理を口にする。


「……あ、甘いッ」


「ほらな。」


苦笑するプロシュートを見てエミはがっかりとしている。

それを見てエミの頭をなでる。


「次はおいしい朝ごはん作る……」


「まぁ、期待はしておいてやる。それに、そんなんじゃあ嫁の貰い手もないからな」



「なくていいもん。お兄ちゃんと結婚するから」


そう言うと、エミはプロシュートの頬にキスした。

そして、椅子に座ると焦げたトーストをかじり苦いとつぶやいていた。


「あ、お兄ちゃんは別の物を食べていいよ……これは私が責任もって食べるから」


「いや、お前がせっかく作ったんだ。食べる」


そう言って、プロシュートはエミの向かい側に座る。

トーストをかじると、やっぱり苦かった。

それでも、不味いとはあまり思えなかった。


「お兄ちゃんは優しいね」


エミがにっこり笑って言う。

こんな平和な日常が、いつまでも続くと思っていた。


楽園には、気付いてしまえばもう留まることはできない。






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