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楽園探しの旅 | ナノ
左手の花束
白い服を着てみようって思った。
あなた色に染まる……っていうのもいいかもしれないと思ったから。
「白……白……うーん」
白い服はたくさんある。どれもレースなどがついてたりして可愛い。ギアッチョが勧める白い服も可愛いのがあっただけにやっぱりな、と思う。
ただ、いつも着ているふくとはちがい、着てみてもそれが似合っているかもよくわからない。店員?あれは売るために嘘をつくのが当たり前だから意味なし。
と、言うわけで私は男友達に色々見立ててもらった。
それと、男性用の白い服を買った。
男友達は、お揃いだなんてラブラブだななどとはやし立てていた。
お揃い。いままで無かった感じ。
白い服を着て、ギアッチョに会いに行ったらなんて思われるか。自分は何と感じるだろうか。
楽しみで、楽しみでたまらなく彼の居る場所に向かった。左手に花束を持ち。
そして、そこで待っていたのは、赤い服を着た彼だった。
「あれ……?どうしたの、急に赤い服なんか着て。」
正直、拍子抜け。
帰ってきて、お揃いで、彼が驚いて。そんな計画が失敗。
それでも、少しこの状況が滑稽でまあいいかと思えた。
「エミこそなんなんだよ、白い服を着て」
あからさまな不機嫌そうな声。怒っている?
もしかして、ギアッチョも赤い服を着て私とお揃いって驚かそうとしたのかな?
「あの男と、お揃いの白い服……クソッ……ふざけやがって」
あの男、というワードをきいて、彼の不機嫌の理由がわかった。
それと同時に少し嬉しかった。嫉妬してくれてるんだ、なんて。
「ギアッチョ、それはね……」
友達なんだよ、と言って私は持っていたプレゼントと花束を渡そうとした。
でもその時には私の服は、いつもの色に変っていた。
聞こえたのは乾いた音。痛くもなければなにもかんがえられない 。
「これで、お揃いだなエミ」
最後に聞こえた声は、嬉しそうでいてとても不機嫌な声だった。
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