-->楽園探しの旅 | ナノ
偶然、必然



「これいいと思うな―、すごく似合うと思うなー」


「着ない」


「なんで毎年私の選ぶ服を着てくれないのさ!」


相変わらず、エミは俺に赤い服を着せようとしてくる。

逆に、俺が白い服をエミに進めれば


「その日のうちにワインで染める」


とか言って軽く否定しやがる。


まあ、お互いの主張にお互いが染まることはなくとも、付き合ってきた。


そんなところも含めてエミの事が好きだったし、エミも好きでいてくれていると思っていたからだ。



少なくとも、あれを見るまでは。



「ねえ、この服似合ってるかな?」


そう言うエミの顔は妙に笑顔だった。


いつもの赤い服を新調して、俺に見せるときと同じあの表情。


エミは新しい服を見せている。

俺はそれを見た。


いつもの光景。


いや、決定的に違う点があった。


エミは白い服を着ているという事。あれだけ言っても着なかった色の服を。


そして、それを見せているのが俺ではなく


「よく似合っている。」


見知らぬ男だという事。



「本当!よかった。私この色は着たためしないから」


その見知らぬ男は、白い服を着ている。

お揃いの色の服を着て、エミとその男は幸せそうに寄り添い歩いていた。




「意味わかんねぇ……」



何故白い服を着ていた?


あの男が勧めたから?


なんで俺が言っても着なかった


どうしてあんなに楽しそうに歩いて



俺は、笑顔のエミをただ見て、立ち尽くすことしかできなかった。




こんな光景を見てしまったのは、ここに居合わせてしまったのは偶然なのか?必然なのか?




白という色に、強い嫌悪を抱いた。






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