-->
楽園探しの旅 | ナノ
偶然、必然
「これいいと思うな―、すごく似合うと思うなー」
「着ない」
「なんで毎年私の選ぶ服を着てくれないのさ!」
相変わらず、エミは俺に赤い服を着せようとしてくる。
逆に、俺が白い服をエミに進めれば
「その日のうちにワインで染める」
とか言って軽く否定しやがる。
まあ、お互いの主張にお互いが染まることはなくとも、付き合ってきた。
そんなところも含めてエミの事が好きだったし、エミも好きでいてくれていると思っていたからだ。
少なくとも、あれを見るまでは。
「ねえ、この服似合ってるかな?」
そう言うエミの顔は妙に笑顔だった。
いつもの赤い服を新調して、俺に見せるときと同じあの表情。
エミは新しい服を見せている。
俺はそれを見た。
いつもの光景。
いや、決定的に違う点があった。
エミは白い服を着ているという事。あれだけ言っても着なかった色の服を。
そして、それを見せているのが俺ではなく
「よく似合っている。」
見知らぬ男だという事。
「本当!よかった。私この色は着たためしないから」
その見知らぬ男は、白い服を着ている。
お揃いの色の服を着て、エミとその男は幸せそうに寄り添い歩いていた。
「意味わかんねぇ……」
何故白い服を着ていた?
あの男が勧めたから?
なんで俺が言っても着なかった
どうしてあんなに楽しそうに歩いて
俺は、笑顔のエミをただ見て、立ち尽くすことしかできなかった。
こんな光景を見てしまったのは、ここに居合わせてしまったのは偶然なのか?必然なのか?
白という色に、強い嫌悪を抱いた。
[ 28/31 ]
[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]