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楽園探しの旅 | ナノ
幸せになり損ねた話2
この周辺でも一番大きいという街は、クリスマスの用意をしていて明るくてもイルミネーションなどでとてもきらびやかだった。
見たことのない光景に、私はただ綺麗と思うしかできない。
「街って、こんなに綺麗だったっけ?」
「綺麗だよ、この季節は特に。」
私はメローネと一緒に街の色々なところを回った。私くらいの年齢の女の子なら本来見慣れた風景となる場所だったところを。
娯楽施設でゲームをし、カフェでいろんな話をする。本当なら当たり前にするようなこと。
ずっとこんな風に過ごせたらいいのに……
そんな風に思っても時が流れるのが早くて、いつのまにか昼を過ぎ、夕方を過ぎ、薄暗くなるとイルミネーションが光だし、昼よりもさらに幻想的な風景を生みだす。
「こんなにきれいなのね、街って。それにすごく楽しかったわ、カフェも娯楽施設ってやつも」
「だったら、また来る?俺はいつでも大歓迎だよ一緒に行くなら。」
その言葉は、もう帰らなければならない、もう来ることはできないという現実を私に突きつける。
「そうね、もう一度……来ることができるなら……」
来ることができるわけないけれど、私はメローネにそう言った。
イルミネーションの光が、歪んで見え始めて私ははじめて今自分が泣いているのだと理解した。そして、泣いているんだと理解した時に私はメローネにキスされていた。
「また、何度でも来よう。エミ」
唇が離れると、メローネは言った。
何度も、もう二度と
「……そうだね、約束だよメローネ。」
来ることはできないとわかっていても、私は達成できることのできない約束をした。
※
あれからすぐに一週間は経ち、次の日が結婚というこの日ようやく私はメローネにこの事を言う決心がついた。
「私結婚するの。」
メローネは、その言葉を何の驚きもせずに聞いていた。
ああ、やっぱり、と言いそうな雰囲気で。
「そうか、それはおめでとうと言うべきなのかな?」
ずきずきと心が痛む。
本当に欲しいのはそんな言葉じゃない。
「わからないわ。一応何度かは会ってる人なの。優しい人だった。」
何を期待しているのか、私は言葉を続ける。
きっと、メローネはこの結婚をやめろとか言ってくれると思って。
「……それなら、君は幸せなんじゃあない?」
私の望んだ言葉は得られなかった。
わかっている、この言葉が本心じゃないことくらい。ばればれだよ。
「そう、ありがとうメローネ。」
でも、そうだよね。結婚が決まったなんて言われたら、私が嫌そうにもしていなければ止めてくれるわけないよ。
「明日の式来てね。」
結局、欲しい言葉は手に入れられないまま。
私は本当に言いたい言葉を言えないまま。
そのあとはほぼ無言で、別れた。
部屋の中で、私は思った。
何でかなわないとわかっていながら不毛な恋をしてしまったんだろう。
もっと早くから、相応しい季節に出会えなかったのか。
……本当にこれであきらめていいのか。本当にこれで幸せなのか。
やっぱり、結婚なんかしたくない。
逃げよう。明日メローネがもしも式に来てくれたら逃げよう。
そして、本当に伝えたかった言葉を彼に伝えよう。
これが、きまりきっていた人生への抗い。
お父さん、お母さん……、あなた方がこれを知ったらきっと私を勘当するんでしょうね。
「──それでも私は幸せになりたいのです……」
次の日に私は式場の控室に居た。
式に、メローネは来てくれるだろうか。来てくれたなら、私は……
衣装を整ると、係員の者は部屋を去っていく。
一人きり。このまま私は、結婚してしまうのか、それとも逃げられるのか。それだけしか考えられない。
そんなとき、ノックもなしに部屋のドアが開いた。
両親か、係員か、それともあの人か。とりあえずノックくらいはしろと咎めるべきかと、ドアのほうを見た。
「だ……メローネ、本当に来てくれたのね。」
そこには、予想していなかった人がいた。
だって、来てくれる可能性はあったけど控室に来てくれるとは思っていなかったから。
「エミ、俺と一緒に来てくれない?」
メローネは私の近くに来て言う。
それは、とても待っていたセリフ。あの時言ってほしかったセリフ。
「メローネ、それ本当に言って……っ」
私が言い終える前に、メローネに腕を引っ張られ口を塞がれる。
そして、首にすっとした感覚がしたと思うと、体が軽くなり息ができなくなった。
「一緒に来てくれるよね?」
メローネの口元が赤い。
自分の口が鉄の味がする。
「………」
声が出ない。
もちろん答えははいだけど。
メローネが私を抱きかかえ、視界が高くなる。
目の前に見えるのは真っ赤に染まったウエディングドレス。
「じゃあ、行こうか。」
メローネの声がする。視界が眩んでいく。暗くなって……暗くなって……
ああ、わかった。メローネ
私首だけなんだね。
2人の男、1人の女、一番不幸なのは誰?
落ちた果実、転がる音、余剰な数字が引かれる音。
決して愛し合えない男女
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