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楽園探しの旅 | ナノ
幸せになり損ねた話1
私の人生はすべて最初から決まっていた。
家の手伝いを結婚するまでの期間し、結婚するときになったら別の街で決められた許嫁と結婚しそこの手伝いをする。
全部全部決められていた。
別にそれに抗う気もなく、私はその人生を歩んでいた。
何の目標もなく、手伝いとして任された農場を管理。
不毛な行為とわかりながらも、それを思わないように。それを考えたら私はこの人生の意味がわからなくなってしまうから。
私くらいの年齢の他の子は、どんなことをしているんだろう。
農場から見える道を通る私くらいの年齢の子は、楽しそうに話しながら街のほうへと向かっていく。
そんな人たちをできるだけ見ないようにして、私はひたすら作業を続けていた。
「ねえ、そんなことばかりしていて不毛だと思わないの?」
それは、突然のことだった。
いつも、街に向かうタイプの同年代の子が、私に声をかけてきた。
でも私はその声に反応することができず黙ったままただ作業を続けた。
「……君くらいの年の女の子はもっと遊んでいたりしているのにね。」知っている。同じ年齢の子は街とかに行ったりして遊んでいたりしているの暗い知っている。
だから、そんなわかりきったことを言ってほしくなかった。
「そう思える君は幸せなんだね。」
ちらりと彼を見て、そう一言返した。
そういう発想ができるってことは、少なくとも私より幸せなんだろうから。
「ねえねえ、君名前は?」
何を思ったのかは知らないけれど、彼は私の名前を聞いてきた。
「君の名前を教えてくれればいうよ。」
作業の手は止めずそっけなく、私が言うと
「俺の名前はメローネ。さあ、名前を教えてくれるよね」
と、なんのためらいもなく答えてくれた。
「私はエミ。この家の一人娘なの。」
だから私も、ちゃんと名前を答えた。
どうせすぐに忘れられちゃうと思うけど、もうこれっきり会わないと思うけど。
そんな期待も外れ、メローネはそれからほぼ毎日のように私のところに来た。
そして、メローネは作業している私によく話しかけた。
色々な質問もされた。それを作業しながら適当に返した。
街に行かないのかという質問もされたけれど、
私は街に行くことはないといった。もしもその街が楽しければ、私は違う街に行くときにつらいから。
「つまらなくない?それ。」
メローネは、私のその言葉につまらないといった。
「楽しくなくてもそんなもんなのよ、私の人生。」
だから私はそういうものなのだといった。
メローネはやっぱりそれはつまらないって言っていた。
こんな風に考えられる彼の事を最初はうっとおしいと思っていたけれど、いつのまにか私は惹かれていた。
※
何度かの収穫期、何度かの誕生日を迎え私は両親に呼び出された。
内容は、次の週には結婚するという事。
わかりきっていたことなのに、嫌だった。
結局、未練を作ってしまったんだ私はこの場所に。心が苦しくてたまらない。
「エミ?らしくない顔してるけど何かあった?」
「メローネ……そんな顔してる?私」
かなり、と答えられて私は苦笑した。
こんな風にしていても、時は無駄に流れていくだけ。未練が消えるわけでもない。
どうせ、未練があるのなら……
「ねえメローネ、私が街に行きたいって言ったら一緒に行ってくれる?」
一夜限りの夢でも構わないから、一度くらい自分のしたかった事をしようと思った。
私の、本当に好きな人と。
「もちろん、行くけど……どうしたの?心境の変化とか?」
「たまには息抜きも必要って思っただけ。それに……」
もう、きっと行くことはできないだろうから。
そうともいえず、ただ頭の中に言葉が回る。
「それに?」
私が固まっていてどうしたのかと思ったのか、メローネが言うと、私はハッとして
「何でもないわ。今は街のほうにぎわっているんでしょ?ちょっと見てみたいの」
と何事もなかったように言う。メローネもそう、そいって何事もなかったようにしていた。
そうときまればと私たちは街に向かう道を歩いていた。
「メローネ、街は私よく知らないの」
「大丈夫、俺がちゃあんとエスコートする。」
「ふふっ、楽しみ。」
この最後の体験は、何もかも忘れて。
楽しむことだけを考えて、彼といようと思った。
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