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楽園探しの旅 | ナノ
成果・収穫2
「ねえメローネ、私が街に行きたいって言ったら一緒に行ってくれる?」
ちょうど、クリスマス位の事だった。今までかたくなに街に行きたくないと言っていたエミが街に行きたいと言い出した。
「もちろん、行くけど……どうしたの?心境の変化とか?」
「たまには息抜きも必要って思っただけ。それに……」
それに、と言ってエミは固まってしまう。
「それに?」
俺が復唱して訊くと、ハッとしたようにして
「何でもないわ。今は街のほうにぎわっているんでしょ?ちょっと見てみたいの」
何事もなかったように言うものだから、俺も何もなかったようにふるまった。
「でもよく街が今の季節にぎわってるなんて知ってるね」
「私だって完全に世間知らずってわけじゃないの。」
街に向かう途中、俺とエミは色々と話していた。
今の季節の街がどれだけ賑やかなのか、街にはどんなものがあるのか。
ほとんどエミが質問していることを俺が答えるだけだったけど、それが普通に面白かった。
なにより、いつもは大人びているエミが質問に答えるたびに子供みたいに楽しそうにしているから、それがなによりも見ていて嬉しかったからだ。
「ほら、着いたよ」
この周辺でも一番大きい街は、クリスマスの用意をしていて明るくてもイルミネーションなどでとてもきらびやかだった。
それを見て、エミは目を輝かせていた。
「街って、こんなに綺麗だったっけ?」
「綺麗だよ、この季節は特に。」
俺はエミをそこらじゅう連れまわした。
時が流れるのが早く感じる、いつのまにか昼を過ぎ、夕方を過ぎ、薄暗くなるとイルミネーションが光だし、幻想的な風景を生みだす。
「こんなにきれいなのね、街って。それにすごく楽しかったわ、カフェも娯楽施設ってやつも」
「だったら、また来る?俺はいつでも大歓迎だよ一緒に行くなら。」
「そうね、もう一度……来ることができるなら……」
そう言うエミの目からは涙が流れていた。
本人も気づいていない、無意識のうちの涙、それがイルミネーションの光を受けてキラキラと光っている気がした。
俺は、そんなエミにいつの間にかキスしていた。
「また、何度でも来よう。エミ」
「……そうだね、約束だよメローネ。」
いきなりキスしたことは咎められず、
帰り道にまた絶対に来ようと、エミは何度も言っていた。
逆にもう来ることは無いかのような気がした。
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