-->楽園探しの旅 | ナノ
告白と拒絶



「あーあ、あのお嬢ちゃん来ねえなー」


教会近くの公園のベンチ。

シオンは呟いた。


シオンは、昨日何があったかは知らない。

それに、俺も何があったかを言うつもりもない。


「やっぱり、もう楽園に行っちまったのかな……なんか良いことなのに残念」


せっかく仲良くなれそうだったのにな、とシオンが言うと心に強い痛みがあった。


「シオン、もしかしてエミのこと……」


「な!?、んなわけないだろ!確かにああいう可愛い子は好きだけどさ」


ああいう可愛い子は好き、シオンは女なのに?


「なぁ、シオン」


「お、おう、なんだよ」



「俺が、シオンのことが好きって言ったらどうする」



言ってしまった。という気分にはならなかった。


その言葉に、シオンは目を丸くしている。


「なに言ってんだよ、俺だって好きだぜイルーゾォのこと」


「そういう感覚の好きじゃあない。恋愛感情として」


抱き締めたいし、キスもしたい。そういう感情。

そう伝えると、シオンは困ったような顔をしている。


「イルーゾォ、その気持ちは嬉しいけど……俺は男だぜ?うん、男」


だから、考え直せ。


とでも言いたそうなシオンに俺は一番言ってはいけない事を言ってしまった。



「確かに男同士ならおかしいかもしれないけど
シオンは女じゃないか。」


「――!?」


シオンが、震えている。見たらすぐにわかるほどに。


さっきまでのが嘘みたいな表情に、真っ青な顔。



「お……俺は……俺は……男だ。女なんかじゃない。」


まるで自分に言い聞かせるような言葉を何度も呟く。

そして立ち上がると

「ごめん、イルーゾォ」

瞳に涙を浮かべ、シオンは走っていった。


わけがわからない、でもここでシオンを見送ればすべて終わるような気がして、俺はシオンを追った。



「シオンッ、待て!」


「…………」


シオンには聞こえてるか聞こえてないかわからないけれど、答えることはなかった。


それでも、とにかく走ってようやくシオンの手を掴み止めることができた。



「離してくれ、イルーゾォ……」


「…………」

「イルーゾォ……俺は男なんだよ。お前が何でそう思ったかは知らないけれど俺は男なんだよ」


こちらの方には向いていても、顔は下を向いたままシオンは静かに話す。


「だから、イルーゾォの気持ちには答えられないし……もう一緒に居ることもできない。ごめんなっ……本当に」


別れを言い出されたとき、俺の中では彼女に拒絶された。それだけが何度も頭の中で回っていた。

この違いは到底理解し合えないと、それがなによりも悲しかった。


そして、そこからの記憶は客観的なもので

俺の手を振りほどいたシオンが、石段を降りようとするところを俺は

ごめん


と一言言って背中を押していた。


シオンの悲鳴が響き、どんどんと石段の下に転がっていく。


それをただ眺め、その場を立ち去った。


その数時間後に彼女が死んだという知らせが教会に入り、俺はなにも思うことなくそれを聞いていた。



後々知ったことは


やっぱり彼女は彼女だったことだ。









外には雷雨が降る深夜の教会。


明かりもなく、誰もいない教会で俺はなんとなく全ての罪を話した。


「でも別に、これは赦しが欲しくて言ったわけじゃあない。
この罪は、この罪こそが彼女と俺を結ぶ絆だから……絶対にもう拒絶されることの無い

だからこの罪だけはだれにも、神にだって赦させはしない。」



歪みに歪み過ぎた恋愛だったんだ。


でもこれで幸せではある。



「ならば、私が赦そう」


雷鳴の光が祭壇に居た人物を照らす。


そこに居たのは

仮面の男


だった。

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