-->楽園探しの旅 | ナノ
成果・収穫1



どんどんと、エミへの興味が増すのは自覚していた。


日に日に、エミの事が好きになるのはわかっていた。


目的地に向かうためだけの道は、エミに会うための目的地に変わっていた。

「メローネは、」


「珍しいね、エミから話しかけてきてくれるだなんて。」


「はぁ……話は最後まで聞くものよ。」


「あー、ゴメン。で、何?愛の告白ならOKをすぐに出すよ」


そう俺が言うとエミは呆れた目で俺を見る。

うん、すごく良いそんな目も。ベネ。


「メローネは街に行くと何をしているの」


意外な事を聞かれた。

エミは街になんか全く興味がないものだと思っていたから。


「街には、まあ、暇つぶしかな。」


「どんな暇つぶしを?」


「んー……適当に人とつるんだり、店に入ったりとか。」


「へえ……。」


エミは興味があるといった顔で俺の話を聞いていた。


「たまにはこの作業止めて街にでも行く?俺と。」


「遠慮するよ。そんなに楽しそうな事をしたらきっと私はやめちゃうから。」


「何を?」

俺が訊いても、それが何かをエミは教えてはくれなかった。


夏の終わりのこの日、エミはどこか遠くを見ている気がした。






「メローネ、一ついる?」


秋の始まり、リンゴを収穫していたエミがそのうちの一つを俺に渡した。

俺がリンゴを受け取ると、エミはまた作業を再開する。

他の所よりも収穫の遅いリンゴは、とても甘かった。


「おいしい?」

「すごく。」


「それなら良かった。」


そういうエミの笑顔は普段笑う事がない分とてもかわいい。

そんな笑顔を見れるのだから、自分は特別なんだろうなと思う。


「そう言えばメローネ、あなたいつもここにきてるけど……街のほうにはいかないの?」

エミが、作業休憩に入ると俺に質問してきた。


「街よりもエミといるほうが楽しいからね。別に行かない。」


「変なの。私には街に行こうっていうのに。」

「それとこれは別。エミとは行きたいけど一人で行くのはって。
好きな子と一秒でも長く居たいのが男ってやつだろ?それって変?」


「……うん、変だよやっぱり。でも、ありがとう。」


好きって言ったのに、かわされた。

この時に何となくわかっていたんだ、エミにはこれから何回も何度も好きと言ったとしても、絶対にかわされるんだろうなって。

それでも、ありがとうというエミはどこか悲しげで、なんでこんな顔をしているのか気になって仕方なかった。



冬になっても、エミは農場で何かの作業をしていた。


「冬なんだからさ、そろそろ暇じゃない?」


「そんなことないわよ。いろいろやることはあるもの。」


「たまには息抜きとかも必要だと思うけど。」


もう一つの疑問、エミがどうしても街に行かない理由。


これもなんでか気になる。街に行っても行かなくても何か大きく変わることなんてないのに。


「息抜き……ね。」



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