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楽園探しの旅 | ナノ
個性と理解2
「世の中にはいろんな奴がいるってことだよ。」
「いろんな奴が多すぎるだろ。」
「それが個性だって―の。個性の集合体がこの世みたいなもんなんだからさ。」
シオンと長い時間を過ごすことで、俺の考えは変わった。
違いは個性であり、他人という存在を認めること。
大切なのは同一であることではなくお互いを理解することであると。
そして、俺はシオンの事が好きになっていた。
数年たち、子供から少年に移り変わる時には俺とシオンはただの友達ではなく、お互いを信じあう親友になっていた。
でも、シオンの親友という肩書きを得ても、俺の気持ちに変わりはなかった。
相手が男とわかってはいても、好きだ。
おかしいことだ、それでも恋愛感情として好きだ。
多分、言えば拒絶されるだろうけれど
「クソッ!背が伸びねえ!!」
「牛乳でも飲めば。」
「一日に何本飲んでると思ってるんだよ!お前いつの間にか俺の背をかなり越してるしー……」
これも個性ってやつだろ、と軽く返すとそれは違うとかシオンは騒いでいた。
シオンは、確かに途中までは普通に背が伸びていたものの、突然止まった。
女と同じくらいの身長に、綺麗な顔。ポニーテールの長い髪。
しょっちゅう女と間違われてはふてくされ、不機嫌になっていた。
「お、そういえばイルーゾォ明日は教会はないが遊べないからな。」
「へー。」
「おいおい、もっとなんかさみしいとかそういうのないのかよ」
「そういうキャラじゃあない。」
そーでしたね。とまた不機嫌そうにシオンは言った。
※
シオンがいない休日、それでも家にはいたくなく俺は街を歩いていた。
その時、俺は彼女を見てしまった。
いつものポニーテールに結んでいる髪は解いてあり、
いつものかっこいい(本人曰く)の服は可愛らしく、
一瞬は可愛い女の子が両親とショッピングしているだけだと思った。
でも、彼女はどう見ても
「シオン……?」
シオンは、男のはずだ。
綺麗な顔をしていて、優しくて、背は低くても……
いや、よく考えてみれば男なんて確証はなかった。
それに、両親の前で女装なんかするわけもない。
なら……
「シオンは…女……?」
この事実を知り、俺は安堵し、その安堵した心に強い嫌悪感を抱いた。
男だとしても好きだ。
シオンという人間が好きなのに、女としって良かったと思った自分が最低だと思えた。
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