-->楽園探しの旅 | ナノ
個性と理解1



「シオンだッ!よろしくな」

明るい、少年。

声が少しうるさいけど、見た目は華奢で綺麗な顔をしていた。


でも、俺には関係ないか……、


いつもの通り、神父様の話が終わればどうしようもない時間が始まる。


「おい」


あの手の人間は特に向こうの集まりに……


「おーーーーいッ!人の話聞けェー!」


「ッ!……何?」


まさか、話しかけられるとは思っていなかった。


うるさい声が、耳にキーンと響きいた。


「おいおい、睨むなよー。耳元で騒いだのは悪かったけどさ。えっと、名前教えてくれないか?」


外で他のやつらが遊んでいるっていうのに、そいつは物好きなのかは知らないがそう言ってきた。


「ああ、俺はシオン。天下の美少年と呼んでくれても構わないぜ。」


「……イルーゾォ。」


「つっこみなしかい……まあいいや、イルーゾォ!読書か?何読んでんだ?」


うるさい。

正直、あまり関わらないでほしい。

どうせいつか嫌われるっていうのに、どうせいつか拒絶されることになるのに。


「君は、行かないのか。」


「どこへだよ?」


外を指差す。外で楽しそうに遊んでいる子供を。


「今日は室内で本を読みたいなーって気分なんだよ」


「どんな気分なんだよ、それ」


「いいんだよッ、男が細かいこと気にすんな!とりあえず俺はこれ読むぞこれ」


そう言って、シオンがもっていたのは漫画本。


「……それ、何」


「俺にとっての本だぜー。さ、静かに読書だろ」


嫌味のない笑顔。

なぜか憎めない。拒絶できない。


といっても、こんなことは今日だけ。ただの興味本位だと思った。



でも、次の日もその次の日もシオンは俺の近くに居て読書を続けた。


他のやつがシオンに遊ぼうと言ってもシオンが誘いに乗ることはなかった。


「おい、イルーゾォこれ見ろよー。マジ面白いぜ」


シオンが俺に漫画の一ページを見せてくる。


「…………」


それに答えることをしないと、シオンは面白くなさそうに何度も俺の名前を読んだり呼び掛けたりした。


「おーい」


「シオンは……」


「なんだよ?」



「俺といて、なにか楽しいことでもあるのか?他のやつのほうが面白いと思うのに、なんで俺のそばに居るんだ?」


シオンは漫画を閉じる。

きっと、これで俺に構うことはなくなるのだと思っていた。


「面白いぜ?イルーゾォは他と違ってかなーり個性的だからな。」


個性的。意味がわからなかった。


「他のやつとはかなり違うってことか?」


「違う違う、違いなんかじゃなくて個性。なんか、お前とかかわるのがこの中では一番おもしろそうだと思ったんだよ。」


面白そう、だなんてことは一度も言われた事がなかった。

それどころか、むしろつまらないとすぐに淘汰される位置に居たはずだった。


「面白いなんていうやつは、シオンくらいだ」


俺が言うと、シオンはそうか?などと言っていた。


「現に俺は面白いのにな。イルーゾォ俺の話に良い突っ込み入れるようにもなったし。」

「……お前は芸人でも目指してるのか?」


「いや、まあ将来なりたいもの候補の一つに入れてもいいレベル。」


「なんだよ、それ」


つい笑う。あまりにもシオンが突拍子もない事を言うから吹き出してしまった。


「おー、イルーゾォようやく笑ったな!」


初めてできた、人前であわせようともせずに自然と出る笑い。


それにつられて、シオンも笑った。


それからも、シオンとはずっと一緒に居た。


「イルーゾォ!街歩くぞ!いいな!!」


「嫌だっていっても行くんだろ」


「よくわかっていらっしゃる。さあ行くぜ!」


シオンは強引な奴で、いつもこんな感じだった。

教会に行く日じゃなければこんな風に俺を引っ張り出していく。



「うーん。今日はどこに行くかなー。」

「あ、決めてはいないのか。」


「行き当たりばったり!それが俺だぜ」


はあ、と俺が溜息をつくとシオンはなんだよーと言ってそのまま畑などのある農業地区のほうに歩いて行った。


行き当たりばったりにそこらじゅう行くのはよくあることで、もう慣れていた。

それよりも、シオンといる時間は何よりも楽しいものとなっていて、これでもいいと思った。


「あ。」


「っ…なんだよ、突然止まって。」


突然、シオンが立ち止まるから、それに気付かないで歩いていた俺はぶつかってしまった。


「ねえねえ、そろそろ俺の気持ちに気付いてくれてもいいと思うんだけど。」


「はいはい、そのうちねそのうち。いま作業で忙しいの。」


「いつもそんなことして。」


「メローネ、あなたと話しもしなくてもいいのよ。私は」


「ごめんごめん。」



仲のよさそうな男女が、会話をしていた。

女性は農作業をしていて、男のほうはそれを見て何か話していた。


それを見て、シオンは笑っていた。


「あの人たちいつもあんな感じなんだよなー」


「いつも?」


「うん。事情はよくしらねーけど、いつもあんな感じ。男のほうが口説いているんだろうけど、それを普通に女が受け流す。なんか面白いよな。」


「……よくわからない。」




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