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兄の記憶2



それから、一人立ち出来る年齢になるまではこの家で暮らした。

一人立ち出来る年齢になれば、エミを連れて街の方に引っ越した。


「お兄ちゃん、これからもずっと一緒に暮らせるよね?」


「あぁ、ずっと一緒だ」


そう言って俺はエミに口付けをした。


エミはそれに全く照れた素振りもなく、笑っていた。


妹だという事はよくわかっていた。

近親相姦がいけない事とも。


「お兄ちゃん、大好き」


それでも、キスして、抱きしめるくらいなら

体を重ねる事さえしなければなにも問題はない。


「俺もだ、エミ」


そう思い込み、この愛をズルズルとひきずっていくはずだった。






また、時間は流れる。


「……お兄……ちゃん……」


ここに来て結構経ったというのに、エミは同じベッドで寝ていた。

いつまでたっても性格は変わらず、俺に対して警戒心というものが全くない。


それなのに、体は成長している。年相応に。


あどけない少女から女に。
ある程度予想はしていた事、だが動揺してしまう。


「エミ……」


いつものように髪を撫で、キスをすると、エミはゆっくりと目を開いた。


「……お兄ちゃん?」


「起こしたか」


「ううん、なんとなく起きちゃっただけだから気にしないで。」


一瞬、不味いと感じたが、エミはキスをした事については何も思っていないようだった。


「お兄〜ちゃんっ」


エミはニヤッと笑ったかと思うとキスしてきた。

さっきの仕返しか何かのつもりだったんだろうが、その行為が一瞬理性を飛ばさせた。


「わー!もう降参だってばー!」


「――!!」


気付けば、エミを組み敷いていた。エミはじゃれ合っていたと思っているのか、笑顔のままだ。


「……お兄ちゃん?」


すぐにどくと、エミはどうしたのかと言いたげな目で俺を見ていた。

このままじゃあ、やばい。

きっとこのままこの関係をズルズルと続けていけば、あの時の ヤツ と同じことをしてしまう。

それは、エミを傷つけ、壊すことにつながる。

だから、俺はエミを突き放すことにした。


それが一番の間違いだとは知らずに……。



完全に拒絶した日の夜、エミは俺にナイフを向けた。


「楽園に、一緒に楽園に帰ろ、お兄ちゃん」

これはきっと、報いなのだろう。

愛した妹が、ナイフを持って詰め寄る。自分の脆弱な心が引き起こした最悪の展開。


「いいぜ、エミ……やれ。」


こいつをこんな風にしちまったのは俺だ、だからすべてを受け止めることにした。


ナイフは、心臓に近い位置に突き刺さる。


「私も……すぐに行くからね……お兄ちゃん」


最後に聞こえた声は、ひどく震えていた。



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