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楽園探しの旅 | ナノ
妹の記憶3
集会所は想像していたより広く、人も沢山いた。
こんなに多くの人が、楽園のことを信じている。
私の悩みよりもっと深刻な人だっているんだろうと考えると、心が痛んだ。
「エミ、今日はこの集会で楽園へ行くためのお告げが貰えるんだ。もしかしたら、このお告げでエミも救われるかもしれないな。」
「シオンさん……ありがとうございます。」
「二人とも、そろそろ始まるから静かに。」
イルーゾォさんが言うと、シオンさんははいはいと適当に答える。
何か儀式のような事が始まり、その儀式を行っている人の中には先程の神父様もいた。
儀式中は物音が一切せず、無音に近かった。少し怖い。
そして、一人の男性が祭壇の前に立った。
「これからお告げを言い渡します。エミという少女、前へ。貴女へのお告げです。」
「えっ」
無音の中、私は声をあげてしまった。私と同名なだけかもしれないのに……
「そう、貴女です。お告げ通りの少女よ。」
その人が言うと、私の前にいた人が道をあける。
そして、祭壇までの道が出来上がる。
どうしようかと困っていると、シオンさんが小さな声で行って来い、と言い背中を押した。
その行動に、勇気をもらい一歩ずづ祭壇に近寄る。
「我々を楽園へ導ける箱舟は哀れなる魂を大地から解き放つ。
救いを求める貴女に≪Ark≫を与えよう」
その人はお告げを私に言うと、私に≪Ark≫を渡した。
≪Ark≫は月光を受けて銀色に煌めいていた。
※
「≪Ark≫って箱舟の事だよなー」
集会が終わり、外に出るとシオンさんが言った。
「ってことはエミは近々楽園に導かれるってことか!よかったな!」
「今日はじめてきた私なんかが、お告げをもらえるなんて……他の人に申し訳ないです。」
「そうでもないぜ、最後にはみんな楽園に行くことができるんだ。俺はそんなに急いでいねえし、エミみたいな悩んでいる奴が先に行くことができればいい」
シオンさんは相変わらずの明るい笑顔で言った。
本当に、優しいんだな……。
「じゃっイルーゾォ、ちゃあんと送ってやれよ!」
「わかってるよ。シオンが送るより安心だろうし。」
「お前……じゃあな!エミ」
※
シオンさんと別れて、私は夜道をイルーゾォさんと歩いていた。
「イルーゾォさんとシオンさんは友達なんですよね」
「そうだけど。」
全然話が弾まない。いままで、兄さん以外の人とあまり会話しなかったせいもあると思うけど……。
「エミ、シオンは俺の救世主のようなものなんだ。」
「救世主?」
イルーゾォさんは私に向けて話しているけれど、言っていたことは独白に近かった。
シオンさんは、イルーゾォさんにとってとても大切な人。だと
「シオンを信じているから俺はあの教会にいる。本当は、楽園な「エミッ!!」」
「お、お兄ちゃん!?」
家に近い道とはいっても、こんな所でお兄ちゃんに出くわすとは思っていなかった。
お兄ちゃんは、そこらじゅうを走っていたのかだいぶ疲労している。
「……この人が、エミのお兄さん?」
「ああ、そうだ。妹が世話になったようだな。」
「お兄ちゃん……イルーゾォさんは私をわざわざ送ってくれたんだよ。」
なにかにイラついた口調でお兄ちゃんが言う。
イルーゾォさんは、気にしてないからいいよ。と言って、そのまま立ち去ってしまった。
「お前…こんな時間まで何していたんだ?心配しただろうが……」
「お兄…ちゃん」
心配そうな声。ああ、昔のお兄ちゃんだ。それだけで、私の目からは涙があふれる。
でも、このまま家に帰ればお兄ちゃんはまた悩む。なやんでまた私を嫌いになってしまう。
「ほら、帰るぞ。「お兄ちゃん、聞きたい事があるの。」」
私の声に反応して、お兄ちゃんは立ち止まる。
「ねえ、何故変わってしまったの?あんなにも愛し合っていたのに。」
涙を、笑みに変え私はお兄ちゃんに詰め寄る。
「さあ、楽園に帰りましょうお兄ちゃん。」
≪Ark≫を握って。
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