-->楽園探しの旅 | ナノ
妹の記憶2



教会には、神父様と思わしき人が居た。

教会に入ると、どうしたのですか?と優しく声をかけてくれた。


「神父様、このお嬢ちゃ……お嬢さんはなにかあったみたいなんです。」


「ええ、見ればわかります。」


シオンさんにそう言うと、神父様は微笑みながら私に言った。


「お嬢さん、何があったか……話してください。私たちは貴女から聞いた話を決して口外しません」


安心できる雰囲気、この人達なら話しても大丈夫……

そう思い、私は過去から現在のことのすべてを話した。

なにか、救いを求めて。


「……以上です」

「苦労したんだな、お嬢ちゃんっ……」


「わわっ」


シオンさんは泣きながら私を抱きしめた。
少し苦しい。でも、嫌じゃない。


何よりも、人に抱きしめてもらうのは久しぶりで……嬉しかった。


「って、何するんだよイルーゾォ」

「シオン、その子が苦しそうだぞ」

イルーゾォさんが私からシオンさんを引き剥がす。

「大丈夫?」

「あ、大丈夫……です。少し驚いただけで」

私が言うとシオンさんは、大丈夫ならいいじゃんか、とぼやいていた。


「エミといったね」

「は、はい」

神父様に突然名前を呼ばれて驚いた。


「貴女は何も間違っていません。妹だから愛せない、そんなことはありません。
ただ、貴女のお兄様は何かに戸惑っているのでしょう。そして、そのはずみでそうなってしまったのです。」


「戸惑っている……」

お兄ちゃんが、何かに悩んでいる気はしていた。
なら、その悩みが解決すればまた私を愛して……


「きっと、貴女も楽園へ導かれるときが来るでしょう。」


「楽……園……?」


「楽園は、人々の全ての望みがかなう場所。」



望みがかなう場所、そう聞いた瞬間から私の興味は完全に楽園に向かっていた。

そこに行くことが出来れば、またあの時のようにお兄ちゃんは私を愛してくれる。
お兄ちゃんは悩むことが無くなる
二人で、幸せに暮らせる。


そんな思いでいっぱいだった。


「私も、その楽園に行けたら……」


「行ける!エミなら絶対に楽園に行けるッ!ですよね、神父様」

シオンさんが私に強く言った。


「ええ、楽園を信じ、行きたいと願うものなら必ず道は開かれます。」

神父様の言葉に、私は期待を持った。


「神父様、そろそろ集会の時間では?」


そんな中、時計をみながらイルーゾォさんが言った。

気づけば外は結構暗くなっていた。いつの間にこんな時間が経っていたんだろう。


「あぁ、もうこんな時間ですか……」

そろそろ、帰らないといけないんだろうか。そう思ってた私に予想していなかった事が起きた。


「神父様、エミも集会に参加してはどうでしょうか」


まっすぐな、真剣な瞳をしてシオンさんは神父様に言った。


「シオン……さん?」

「彼女も楽園を信じている同志です。それに、こんな中一人で返すことなんかできません。」


神父様はシオンさんに言われて悩んでいた。

でも、すぐに神父様は優しい笑みを浮かべ


「いいでしょう。
集会が終わり次第、彼女を家まで送ってあげなさいイルーゾォ」


「……わかりました、神父様。」


神父様が言うと、イルーゾォさんはその事を了承する。


「あれ?俺じゃないんですか?」


「貴方が行ったとして、エミの兄に会って感情的にならず話せますか?」


「あー無理かも」


私は、帰りはイルーゾォさんに送ってもらうことになり、集会所に向かった。




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