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楽園探しの旅 | ナノ
プロローグ
誰からも愛される可愛い妹。
自分の倍以上幸せになって欲しい、なるべき妹。
「それなのにどうして……こんな残酷な……」
妹の幸せを願う兄は、最後に何を見る。
物語は過去に遡る。
※
とある信仰心の強い村に、母と兄妹の三人家族がいた。
兄妹はとても仲が良く、いつも兄と妹は一緒に居ました。
「シオン、大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ。ちゃんと付いていけてるよ」
兄であるリゾットの後を妹のシオンが少し早足に付いていってる姿は、とても微笑ましく、とくにシオンは容姿がとてもかわいいことから村の全員に愛されていた。
もちろん、リゾットもシオンの事が大好きであった。
ただ……
「シオンは本当にかわいい子ね。」
「天使のようにかわいい子だね。」
村人は兄妹を見て、いやシオンを見るといつもそんな事を言っていた。
「お兄ちゃん、褒められちゃった!」
「………」
「お兄ちゃん?どうしたの?」
「いや……なんでもない……」
妹が可愛くて、村のみんなが褒めるのはいつもの事でよくわかっていた。
それでも、リゾットは村の者がシオンを見て褒めて、それをシオンが喜んでいるのを見ると複雑な気持ちになっていた。
一番妹を理解しているのは自分のはずなのに。
一番妹を愛しているのは自分なのに。
その妹は褒められれば他の物にその笑顔を向ける。
ただそれだけなのに、村人にも妹にもいいようのないイラつきを覚える事があった。
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