-->楽園探しの旅 | ナノ
プロローグ



果実、果実、真っ赤なきれいな果実。

自分のもとに落ちてこないなら、いっそ刈り取ってしまえばいい。


「あぁこれは……」



間違った季節に出会った恋は、実ることなどない



物語は過去にさかのぼる




最初はただ、毎日通る道にいつも通るリンゴ園。

農作業をしている少女がいるのが気になって、冷やかしのようなもので声をかけた。


「ねえ、そんなことばかりしていて不毛だと思わないの?」


少年が訊くと、少女は一瞬少年のほうを向きそしてまた作業に戻った。


「……君くらいの年の女の子はもっと遊んでいたりしているのにね。」


作業を見て、少年は言葉を続ける。


「そう思える君は幸せなんだね。」


今までの質問に答えなかった少女は、少年のほうを向き笑顔で言った。


少年はそんな少女に興味を持った。


「ねえねえ、君名前は?」


「君の名前を教えてくれればいうよ。」

一切手は休めずに、少女は言う。


「俺の名前はメローネ。さあ、名前を教えてくれるよね」


「私はエミ。この家の一人娘なの。」



一人娘は、せっせと種を蒔く。

メローネには、それが不毛な行為に見えた。
そして、そんな風に思っているメローネは幸せなんだろうと少女は思った。



それからも、毎日のようにエミは農作業をしている。

そして、その傍らでメローネはエミの作業を見ながら話をほぼ一方的に言っていた。


「エミは、街に出たりはしないの?」


「街には行かないわ。」



「なんで?農業地区から出て街で何かしようとか思わないの?」


メローネに言われ、一瞬作業が止まり考える。


「特にないわね。」


考えた後ないと答え、また作業を進める。


「つまらなくない?それ。」


「楽しくなくてもそんなもんなのよ、私の人生。」



そんなことを言える君は、幸せなんだろうねとエミはつぶやいた。



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