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春先、ようやく暖かな日差しがさすようになり始めてきた頃。
この季節に行われる行事といえば卒業式である。


去年の卒業式のほうが、思うところもあったなんて思いながら式を終えて証書を持ってぼうっと誰もいない教室にいた。

高校の卒業式、人生初の卒業式だというのに、やっぱり去年に承太郎が出て行った時のほうが泣いたし、色々あったと思う。

それはそれでどうかとも思うけれど、なぜか。

色々あった高校生活、というかこの世界に来てからの生活。やっぱり大半の思い出はあの旅と、カキョと過ごした学生生活。

夕日の差す教室で、もう元自分の席に座り、机にべたっと体を預ける。

進路はといえば、語学系の短大に決まった。カキョとは違うから、これから会える時間も減るんだろうなと考えると少し鬱蒼とした気分になる。
今回の卒業式で感極まったりしなかったのはこういうのもあるからなんだろう。会えるといえば会えるけれど、時間が減る。会えないわけじゃない。
承太郎は留学してしまったから、もうほとんど会えないとなってあんなふうに泣いたりしてしまったのだけれど、これは微妙で。

会えないわけじゃないんだから、子供みたいにダダをこねるなんてバカみたいだから。

やっぱり、鬱蒼とした気分になる。
……カキョは、どう思っているんだろ。


「莉緒」


そんなことを思いながら教室にじっとしていると、ようやく待っていた人の声。


「待たせてごめんね」

「ううん、大丈夫。」


カキョが来ると、教室の向こうの廊下で人の気配。
私が彼を待っていたのは、彼が生徒会系の事にかかわっていたから。
今廊下から聞こえるのはその集まりが終わったことを表している。


「それより、もういいの?」


こういうのは大抵、もう少し話していたりする人は残っていたりしているケースが多い。
そこでの彼の立ち位置がどんなものかは知らないけれど、念のため聞くと別に良いと回答される。
そういえば、カキョがトレードマークとでもいえる緑色の学ランを着ているのも今日が最後なんだなと思うと、なにか違和感のようなものを感じた。
最後だと断定できるのは、第二ボタンのない学ランを着て歩けるのなんて今日という日くらいということからだ。
この後はロングコートとか着るのかな?……暑そう。

そんなことを考えていたら、カキョは私の隣に座る。


「………」

「………」


よくわからない静寂がこの空間を包む。
それがなぜか、一瞬一瞬気まずいものになって、どうにか話を切り出さないといけないような気がした。


「「あの、」」


「え、あ」

「ご、ごめん。」


まずい、なんだろうさらにこじれた気がする。
その前に、何故この空気なのかがもう疑問なんだけれど。
なんかわからないけれど、緊張して仕方ない。

それがなぜか、本当にわからないけれど。


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