迷走中

今ここに存在していたとしても、

私は違う世界の人間で
本来ここにいない人間

彼は死を回避して
彼は新しい運命をたどっている

本当ならきっと
私の知らない誰かと出会って

知らない誰かと恋をして

私の知らない生活を送る


だから


彼の人生に私が関与していいのか、まだ私は正解がわからない。



「莉緒、どうかしたのかい?」



あなたの事をずっと好きでいていいのか、考えていました。


なんてことは言えず



「何でもないよ。」


と、笑って返した。

私が笑顔で返すと、そう、と言って笑顔で返してくれる。


その笑顔を見て、心の中でごめんなさいと謝った。


罪悪感は、まだ消えない。






本当は、違う好きな人がいるんじゃあないかって何度か考えたことがある。


本当は、私の事そんなに好きなわけじゃないかもしれないって考えたことがある。


もしかしたら、後悔してるかもしれないと考えたことがある。



でも優しいから、このままを続けてくれているんじゃと考えたことある。

そんなことをずっと考えて泣いていた。





「……馬鹿か、テメーは。」



「馬鹿って……」


どうにも、家では顔に出やすいらしい。

最近悩んでいることを承太郎に看破され、今話していた。その結果馬鹿かと一蹴された。



「かなり思ってるんだよ。私が、こんな風にしていいのかって。本来だったら消えるはずだったし……」



「消えたとしても花京院はテメーの事を今みたいに好きでいると思うがな。」



「……それにもし、命をすくったからとか言う負い目とかだったら嫌なんだ。」



もし、そうだったとしたら私は……やっぱり居ないほうがいいと思う。



そう言うと、承太郎は溜息をつきやれやれだぜとつぶやいた。



「本気でそう思っているのなら相当の馬鹿だ。」



「何度馬鹿って言うのさ……」



バカバカ言われてただでさえへこんでいたのにさらにかなしくなる。


「一番最初にテメーの異変に気付いたのは花京院だ。」


「え?」


「本気で好きでもないヤツのチョットした異変に気付くか?……後は自分で考えろ」





承太郎が出ていって数十分、数時間、また考えた。

カキョが、本当はどう思っているのか本人にきちんと聞くべきなんじゃないかと。もし帰ってきた答えが考えていた怖い結末でも、聞くべきなんじゃないかと。




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