手で、自分の頬に付着している雫を拭う。手の震えが止まらない。
「……嘘」
赤い。鉄の匂い。ぬるっとしていて、生温かい。
これは血だって理解したくないけれど、向こうにカキョがいる。
それがわかった時にはそのほうへ向かっていて、敵に背を向けるのは殺してくださいと言わんばかりの行動だけれど、それでもそれ以外に行動ができなかった。
その場に着いた時には、なにも考えられなかった。
((嘘だ、こんなの……ありえない、だって、私は……))
血まみれで、穴があいていて、
でも、おかしいよ、私はカキョを救ったはずなのになんで?こんなのありえないよ。
「ねぇ、カキョ……嘘だよね、こんなこと……っ」
問いかけても、返ってこない。帰ってこない。
昨日までは、返してくれた。
学校へ行く途中、昼休みの時、帰る途中、全部、私が話しかけたら返してくれた。
さらに近付いて、手を握るとまだ温かい。いつもと同じように、温かい。
でも、だんだんと色がなくなっていく。
それに気がつけば、気がついたらで涙が止まらない。
どうしてこんな改変された過去にいるのか。
なんで、こんなに救われないのか。
「莉緒……無事だったんだ。」
下を向いて泣いていた私の耳に、聞きなれた大好きな人の声が届く。
無事だった、なんて心配できるような状態じゃないのに。
「私は大丈夫だよ……でもっ……」
嗚咽で、うまく話すことができない。
その上相変わらず涙も止まらないから、きっと私はいま酷い顔してるんだろう。
「ごめん……好きな子を泣かせるなんて……最低だね」
「そんなことない!悪いのは……救えなかった私……」
ふと、思った。私は心のどこかで、救えると高をくくっていたんじゃないか。
時を止められても、前みたいに止め返せると。
過去だから、簡単に救う事が出来ると。
どうせ、夢なんじゃないかと。
「……最低だよ、私……最低すぎる」
自虐的な言葉を並べようとしたら、握っていた手を引かれ、それ以上言わせないとでもいうかの様に口で口をふさがれた。
口の中で、鉄の味が広がる。それを嫌とは思わない。
けれど、その味は私に現実を突きつける。
「莉緒はなにも悪くないよ」
口が離れると、そのまま抱きしめられた。
ああ、全くあの時と同じ状態なんだ。シチュエーションは全く違うけれど。
行動は、同じ。 気持は、悲しみと後悔しかないけれど。
この結末を変えるために来た私は、結局何だったんだろう。
そのまえに、これは、夢?
でも、夢ならもっと自分の都合のいいように行くような気がする。
じゃあ、これが現実で、救えたことは夢だったんだ。
いままでの全部が、とても、とても良い夢。
※
「―――っ!!」
飛び起きる、という言葉の通り起きた。
やけにリアルな嫌な夢。寝汗がとても気持ち悪い。そして、涙が止まらない。
少し落ち着くまでとにかく泣いて、携帯を開いて時間を見た。
そして、なんであんな夢を見てしまったのかがわかったような気がした。
――1月16日
君が本当は死ぬハズだった日
明日、朝一番に君に会いたいと心の底から思った。
会えないと、多分不安なままだから。
―――――――――――――――
言い訳はなうにて
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