短編 | ナノ
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ブチャラティが寝ている。

「ブチャラティ?」

ここ最近忙しかったから仕方ないにせよ、彼が起きていないと仕事が進まないのも確かだ。


「少し寝かせといてやれ」


起こそうとした私にアバッキオが言う。
とは言われても、起こさないと仕事は進まない。組織改革の重要な時なんだ、そんな時にボスの右腕ともなる彼に寝られていては困る。


「でもアバッキオ、今が大切な時なんだよ?」


「大切な時だからこそ少しくらい休ませてやれヨシノ。気が利かねえな」


確かに、大切な時に体調を崩されたりすれば困る。アバッキオの言った事は最もだった。
だとしたら仮眠にしてもこんな風に寝ていては良くない。


「じゃあちょっとかける物見つけてくるね」


「早くしろよ、テメーにもやる仕事は山ほどあるんだからな」


私はそう言って部屋から出る。アバッキオの言うとおり私にも仕事はある。あの座っているアバッキオの胸までの高さある書類。あれは当分終わりそうにないし、これからも増えると考えると逃げたくすらなる。
なにしろ、新生パッショーネのボスが変わったことを知っているのは護衛チームだけだ。他の人ははじめからジョルノだったという事になっている。

それにしても、かけるものどうしよう。あ、私の部屋にあるタオルケットとか……あ、駄目だアレめちゃくちゃかわいい。


「痛ッ!なにぼーっとしてんだよヨシノ」

「っと、ナランチャ?どうしたの、勉強は?」

どうしたものかと廊下で立ち往生していると何かから逃げているのかナランチャとぶつかった。
何かから、と言うのはすぐわかる。フーゴだ。


「ちょっと間違えたらあいつフォーク持って……ってうわヤベッ!」


せわしない。
それにしても、フーゴのスパルタ教育は確かに常軌を逸したものがある様な気がする。
全身にわたってフォークさしを披露した時にはジョルノも何とも言えない顔で急いで治していた。
走っていくナランチャを見て考えていると、その後に続きフーゴが来た。
どこに逃げるのなんか予測済みなんだろう。走りなんかせずに歩いてくる。


「あ……ヨシノ」

「大変ね、フーゴも。」


フーゴはあの時、ボスを裏切る時についてくることは無かった。だけど、裏から私たちを助けていてくれたのは知っている。だから今もここに居る。
やっぱり居心地はあまり良くないようで私に対してよそよそしいところがあるけれど、そのうち治って前みたいになることを願っている。


「ナランチャなら……あ、まあ言わなくてもわかるか。」

わざわざ言ってしまうのもナランチャに悪い。
それに、この様子ならもう怒りも収まっているだろう。ナランチャを見つけ次第当分また穏やかに勉強を開始するはずだ。


「ヨシノ……ごめん」

「え?突然どうしたの」

「僕は、あの時」

「私はもう気にしてないよ。こうしてフーゴも戻ってきたんだし、みんな楽しくやってるんだから」


フーゴはあの時ついていけなかった事を懺悔する。
後悔していたってどうしようもないのに。何かが戻るわけではないのに。
だから私はもう気にしないでと返す。
気にしないでといくら言っても、フーゴはいつまでも引きずっているけれど。


「それでも、君は……君が」


「もういいから、ね?早くナランチャとの勉強再開しなよ。ある程度できるようになったらナランチャも学校に行けるんだからさ」


困ったものだ。私は気にしていないのに。他の人にもこんな感じなのか、だとしたらとても可哀想だ、フーゴも言われているであろうジョルノやミスタも。


「あ、私アバッキオとブチャラティ待たせてるから行くね」


どうにも重い空気。私は正直なところ逃げた。
逃げたからってどうにかなるものじゃあないけどそのうちこんなこともなくなるはずだ。今は時間の解決にまかせよう。


その場から立ち去って気付いた。
かけておくのにちょうどいいものは無いか聞いておけばよかったと。


「あー、失敗した。他に誰かいないかな…」





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