短編 | ナノ
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地獄も天国も、あるのかは知らないが

地獄に落ちれば救われて、天国に登ればまた会えると思った。

手首を無くした少女が、わたしに楽になるために首を絞めてくれと懇願したのを今でも鮮明に思い出せる。


「もっと、強く……締めてくださっ……」


か弱い声で、少しずつ力を入れるたび、反射的にヨシノの腕が動き、無い手首から流れ出る血がわたしの手に何度もどろりとかかる。
無い手首はどこに?それは少し離れた場所に丁寧に包装されて置いてある。わたしが切り取ったのではない、彼女が勝手に差し出してきた。

切り取って腐らせてしまうのはあまりにももったいないと思っていたのに、上手くいかないものだ。その上、こんな手首の無い状態でうろつかれるのは困ると思い始末しようとすれば、向こうから殺してくれと頼んできた。

他の人とは、違う殺し方を。

ヨシノはわたしが殺人鬼と知っていたのか。


「ありがとう、ございます……じゃぁ」


そんな声が聞こえたかと思うと、彼女は死んでいた。
無い手首からは相変わらず血が滴り落ちている。証拠は、残すべきではない。
いつものように死体を処理して、包装されている美しい手をまじまじと見つめる。

これを切り取る時彼女は何を考えていたのか、この手はいつ腐ってしまうのか、彼女のもとにあれば当分長い間腐ることはなかったはずなのに。

手以外に、興味はない。なのになぜ、こんな虚無感が私を襲う?


彼女を、ヨシノ自身を愛していたのか?


地獄に落ちたら救われる、天国に昇れば救われる。

天国など、あったとしても決していけることはないとわかっている。純粋な君は天にいる、罪が晴れるなら、そこでこの答えを見つけよう。





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